豊漁のマイワシに追いやられてはるか沖へ
なぜ国産のサバは、脂の乗りが良くない小型魚ばかりなのか。漁獲が低迷し全体の水揚げが減っていることも一因だろうが、海流や他魚種との関係を指摘する声がある。サンマと比べると、サバは資源水準が極端に悪いわけではない。
海況・漁況等を収集配信する漁業情報サービスセンターは、主漁場となる太平洋では「サバが北上するときの回遊がマイワシよりも沖になることが多い。ここ何年か、東北から北海道沿岸ではマイワシが豊漁となっているため、秋になって大きく成長したサバが南下する時期、漁船の操業範囲を超えてしまうほど沖へ遠ざかってしまっている」と説明する。
つまり、大型のサバも海にはいるものの、沿岸で幅を利かすマイワシに回遊コースを阻まれ、漁船が獲れないほど、遠い沖合へ追いやられているというのが専門家の見立てだ。
国産のサバの多くが、生鮮食用向けとして流通に乗らない理由はほかにもある。津々浦々の漁港で獲れるサバの大きさ・脂の乗りなどに「日々、ブレがあって安定した仕入れができない」と築地場外市場(中央区)で人気和食店の店主は打ち明ける。和食店だけでなく、塩焼き、味噌煮などで人気のサバだけに、安定した仕入れを求められるが、国産サバは小型が多いだけでなく、産地の水揚げが不安定なため、店の味や品揃えに安定感を欠いてしまうという。
500グラム超えのサバがノルウェーではごろごろ獲れる
こうした嘆きの声に応えられるのが、ノルウェー産のサバなのだ。筆者は2022年9月、漁業が盛んなノルウェー南部西岸のオーレスンを訪れた。水産加工場に横付けされた1500トン級の同国巻き網漁船の水揚げ状況を取材したのだが、まず驚いたのは漁船からすぐ横の加工場へ送られるサバは、人手を介さずにすべてポンプを通じて流されていたこと。
加工場へ入ったサバは洗浄されてから選別機にかけられるが、日本で例えば石巻や銚子や沼津、福岡などで見たサバと比べて、かなり大きなものという印象だった。日本ではざっと「500グラム以上のサバは、全体の1割もない」(魚市場関係者)というが、ノルウェー・オーレスンの水産加工業者によれば、3割ほどが500グラム以上だという。漁獲は日本の秋にあたる9月から11月くらいまで。比較的大型で脂が乗ったジューシーなサバは、大半がすぐさま冷凍されて日本などへ輸出される。
ノルウェー大使館水産部によると、2023年の同国からの対日サバ輸出量は、約6万3000トンで、韓国への輸出量(約4万2000トン)を大きく上回って第1位。中国など、いったん第三国に渡って加工処理され、日本へ送られるノルウェー産のサバも少なくないとみられ、ノルウェーにとってはサーモンを含めて日本が大事な得意先となり続けている。