離職率を下げるには「報酬の分配タイミング」を早めよ!

キーエンスの全社業績連動型報酬には、さらに、他社とは異なる特徴がありました。それは、「全社利益の社員への分配タイミングが早い」という点です。

田尻望『高賃金化』(クロスメディア・パブリッシング)

多くの上場企業で導入されている「従業員持株制度」も全社業績連動型報酬の一種です。社員は持株会に加入していれば、拠出額に応じた割合で配当金などを受け取れます。

しかし持株制度の場合、どれくらいの金額が手元に戻ってくるのかがわかりませんし、多くの場合すぐには利益を得られません。一方、全社業績連動型報酬では、どれだけの利益を享受できるのかが事前にわかり、しかも数カ月という短期間で報酬を得ることができます。

人は、「長期的なビジョンや目標が大事」とはわかっていても、「短期的な報酬」のほうが明確で頑張りやすい傾向があります。人間も、ずっと先に大金をもらうよりも、額は少なくても、すぐにお金をもらうほうを望みます。

もしみなさんの会社が全社業績連動型報酬の制度を導入するなら、全社利益の社員への分配タイミングをできるだけ早める仕組みを構築していくことも重要なのです。

また同社では、毎月の給与にも全社利益が振り分けられていました。そのため、毎月のように給与額が変動しました。社員たち(私も含め)は支給額が上がれば「よし、もっと稼ごう!」と思い、もし少しでも前の月より下がれば「来月はもっと頑張らなければ」という気持ちになったのです。

これがもし「全社利益の給与への反映は1年後です」などと言われていたら、自分の頑張りが報酬反映されるのが遠く、途中でモチベーションは下がり、へたをしたら、そんな報酬制度があったことなど忘れてしまう人も出てくるかもしれません。

全社業績連動型報酬は、支給できるタイミングをできるだけ早めに調整して、小分けに支給することによって、社員の仕事に対するモチベーションが維持できます。

と同時に、社員の離職率を下げるという効果もあります。この制度を導入する場合は、ぜひ報酬の分配方法に気をつけて制度設計を行ってみてください。

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