「社員が発想したものは、だいたい役に立たない」理由
社員に対して「うちの社員たちは、われわれの予想以上に成果を出してくれる」という期待をもって会社の運営ができればどうなるでしょうか? 社長や幹部たちが予想する、「どんなに頑張っても、これくらいの成果しか出せないだろうな」と考えるレベルを、多くの社員が超えてくるのです。
これは営業の売上だけでなく、新商品企画においても同様です。
「社員から出てくるアイデアや新商品企画は、これくらいのレベルだろうな」と考えるラインを超えて、「すごい! こんな企画があるのか」「こんな発想もあるんだ」という画期的なアイデアや企画がどんどん生まれてくるのです。
多くの経営者は、「社員の意見や発想を大切にしたい」「社員からの提案やアイデアを、どんどん取り入れていきたい」と口では言っても、本音の部分では「社員たちに自由に考えさせても、なかなか新しいものは生まれない」「社員が発想したものは、だいたい役に立たない」と思っています。
厳しい状況かと思いますが、この期待を超える仕組みにできている会社は少ないと思います。
実際に多くの会社では、経営者や経営企画の人間が考え、生み出した価値のほうが高く、社員は経営者らを上回る価値、期待以上の価値を生み出せていません。
それは当然です。多くの会社では、まず経営者らが新たな市場をつくり出し、そこに人を投入していく形で事業展開します。社員に「社長の予測・期待よりも高い価値を生み出せ」と言っても、じっくりマーケットを見すえて、考え続けた経営者を超えることなどできていないのです。
社員が「絶対やりとげる」という意欲をもてるか
しかし、キーエンスでは「この市場でそんなことができるのか」「お客様は、こんな付加価値を求めていたのか!」というアイデアや企画が次々と出てきていました。「最小の人で、最大の付加価値を上げる」ためには、社員が経営者の予測・期待を上回る成果を出し続けることが重要なのです。
では、なぜキーエンスではそんなことが実現できているのでしょうか?
その秘密の大きな要因のひとつに「報酬戦略」があると考えられます。
報酬制度、評価制度を活用することによって、社長や上司からの指示やノルマではなく、社員たちが自ら進んで高い目標を掲げる仕組みをつくることは可能なのです。そして、上層部が「まあ、これくらいの成果は出してくれるだろう」と思った成果・業績よりも、さらに高い成果・業績が出てくることもあるのです。
社長や上司が、「そんな高い目標を掲げて、本当に達成できるのか?」と思っていても、社員は「絶対やりとげる!(なぜなら自分のためだから)」という意欲があり、本当に達成してしまう、そのような流れを組み上げることは可能なのです。
こういう流れ、仕組みができると、場合によっては経営者よりも社員のほうが、「組織全体が生み出す付加価値を最大化しよう」という強い気持ちを持つようになります。キーエンスはそうした構造をつくることで、常に最大の付加価値を創出し続けているのだと思います。