全体の利益の10%をみんなで山分けする

全社業績連動型報酬は、個人プレーではなくチームプレーを基本とし、個人責任ではなく連帯責任という考え方が基本となります。みんなで成果を出せば、みんなの給与も上がり、みんなで頑張っても成果が出なければ、みんなの給与も下がるのです。つまり全社業績連動型報酬は、「チームで戦うことに対しての報酬」なのです。

たとえばあなたが月1億円の利益を上げている営業だとします。あなたの会社にいるほかの営業メンバー10人は、一人500万円の利益しか上げていません。あなたとほかのメンバー合わせて、部署全体の月間利益は1億5000万円です。

もし会社が全社業績連動型報酬の制度を導入している場合、そのままでは、あなた一人だけが頑張っていても、あなたの給与もメンバーの給与も上がりません。

そこで、あなたは1億円の利益を上げる仕事のやり方を、社内のほかのメンバーにも教えてあげる必要があります。その結果ほかのメンバーも、一人1億円とまではいかなくても、一人5000万円の利益を出せるようになると、あなたが出している1億円の利益に加えて5億円の利益が出て、会社全体の利益が6億円となります。

ここで全体の利益の10%をみんなで山分けする場合、全体のパイが1億5000万円の場合と6億円の場合では、どちらのほうが給与が高くなるのかと考えると、当然後者のほうです。

さぼることが許されない全社業績連動型報酬

ここで注目すべきポイントは、ほかの人に利益を上げる仕事のやり方を「構造化し、横展開する」ということです。成功の秘訣ひけつを教えることで組織全体の利益が増え、みんなの給与が増え、会社としても利益向上のノウハウがたまります。

このような仕組みにすることで、「頑張っている人がもっと成果を出せるよう、サポートしてあげよう」「成果が出ない人がいたら、助けてあげよう」、そして「全体でプールされる分を増やしていこう」という社員のモチベーションが喚起されていきます。社員が自分のことだけを考えるのではなく、社員同士がお互いに手を取り合って助け合うようになるのです。

紙の資料を見ながら相談する2人の若いビジネスマン
写真=iStock.com/chachamal
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反対に、もし周りに手を抜いて仕事をしている人がいたら、その人に対して不満や怒りが湧いてくるかもしれません。「彼が利益を上げないせいで、自分たちの給与が上がらないじゃないか」「彼はあまり頑張っていないのに、なぜ彼にもあんなに報酬が与えられるのか?」と思うのです。

たとえば戦場で一人だけ士気の低い兵隊がいたら、部隊全体が巻き添えになって、仲間が命を落としてしまうかもしれず、場合によっては部隊が全滅してしまうかもしれません。

部隊の兵たちは、「もっと命がけで頑張ってくれよ!」と思うでしょう。このように、互いに助け合うという働きが生まれ、反対に「さぼることが許されない」という状態になるのが、全社業績連動型報酬の特徴なのです。