いい会社とはいい人が集まっている会社——それを体現しているのが、高知市のディーラー、ネッツトヨタ南国だ。「全社員が勝利者になる」ことを最優先し、顧客満足度の高いサービスを実現、業績も好調に推移している。創業以来経営に携わってきた横田英毅取締役相談役に話を聞いた。最終回となる今回は、社員を幸福にすることが、ひいては会社を成長させることにつながるという、独自の経営哲学に迫る。
社員が自らのアイデアで新車発表会を演出。営業、エンジニアなどが一体となって、お客様に新車のよさを伝える工夫をしている。

全社員が勝利者になること

——会社の歩みから、人材育成、組織づくりのことなどを聞いてきました。今回は会社経営をテーマに伺います。横田さんの著書のタイトル『会社の目的は利益じゃない』は、かなり衝撃的です。意図するところをお聞かせください。

【横田】会社の目的は利益じゃない』は、出版社の意向でそういうタイトルになってしまいましたが、私としてはサブタイトルにある、「誰もやらないいちばん大切なことを大切にする経営とは」ということを伝えたくて本を書いたんです。

「会社経営では利益が大事ではないとはどういうことですか?」「それで経営が成り立つんですか?」などと講演や勉強会などでよく尋ねられます。「いちばん大事なのは全社員が勝利者になることで、それを継続し続けるために必要なのが利益ですよ」と説明をするのですが、これがなかなかわかってもらえない。

——横田さんは、社員を幸せにすることは「目的」であり、利益や売り上げを増やすことは「目標」だ、という言い方もされていますね。ここのところを、もう少しわかりやすく教えてください。

【横田】私のなかでは、「目的」は質を追求するもの、「目標」は量を達成するもの、と分けて考えています。「目的」は価値観、理念、志など数値化できないもの、進むべき方向を追い求めるものです。社員の幸せ、お客さまの幸せ、社会貢献などは「目的」です。「目標」は量を求めたり、数値化できるもの。会社経営でいえば売り上げ、利益、シェアなど、個人でいえば営業成績、給与などです。

「目的」とは、いわば経営理念です。これがしっかり浸透していないのに、「目標」である売り上げや利益ばかりを追い求めると方向が定まっていないので、右往左往してしまう。そのために、利益などの面でいい結果が出ず社員は疲弊していく、というサイクルに陥るのです。