ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」をはじめ、「天丼てんや」「リッチモンドホテル」などを展開するロイヤルホールディングスは、2年連続の赤字に陥った後、その後業績を回復し、いまは堅調な経営が続いている。長期的視点でグループ事業を展開する戦略に転換したからだ。それを主導してきたのが菊地唯夫会長である。改革をどう進めてきたのか。また、これからの課題とは——。菊地会長に話を聞いた。
幹部向けに菊地会長自らが講師となって「経営塾」を開催。受講者は延べ900人に達した。

「悪魔のサイクル」から脱するために

——前回に引き続く質問になりますが、2010年にロイヤルHD社長に就任した当時の経営状況をどう見ていたのですか?

【菊地】外食市場がピークだったのが1997年です。ロイヤルの業績を1997年から2010年まで振り返ってみると、3~4年周期で「増収減益」「減収増益」を繰り返していました。なぜそうなるのか。外食市場のパイ全体が縮小しているなかで、既存店の売上高は前年割れが続いている。それをカバーしようと新規に出店をします。新店分、売り上げはアップしますが、しかしすぐには利益に貢献しませんから、増収減益になります。さらに利益が減ると、それリストラだ、となる。不採算店を閉めて、減損処理をし、新規出店をストップする。そうすると、利益は回復しますが、既存店は前年割れ状態なので、売り上げは低下し減収増益になります。その状態が続き、利益が回復するとまた新店を出す拡大路線へと転換する。タイミングよく危機をしのいでいるように見えますが、実は、減損処理をすることで過去に貯めた資本を棄損しているわけです。赤字が続けば銀行からの融資も条件が厳しくなってきます。この増収減益と減収増益を3年から4年周期で交互に繰り返す“悪魔のサイクル”からなんとしても脱却しないといけない状態になっていたのです。

——そういう循環が続いているところを、どうやって赤字体質から脱却したのですか?

【菊地】中期経営計画のスパンで取り組んだのでは、3~4年周期問題は解決できません。そこで、10年間の長期ビジョン「ロイヤルグループ経営ビジョン2020」を掲げました。増収増益体質にするために、ビジネスモデルをゆっくりでもいいから転換していくことにしたのです。まずはグループ全体の方向性を示しました。それがグループビジョンで、柱は2つありました。1つは「お客様の満足」を最大の目標とし、時代の変化にしなやかに対応すること。もう1つは、日本で一番質の高い“食”&“ホスピタリティ”グループを目指すこと。