生放送で「ポイントは3つ」は禁句

Q テレビの生放送って、我々が想像している常識が、必ずしも通用しないことがあるのですね。他にもそんな事例はありますか。

A プレゼンテーションのコツで「3の法則」というのがあります。「ポイントは3つあります」と言ってから、順番に話し始める手法です。これはビジネスシーンでは聴衆を引き付ける効果的な演出方法とされていますが、テレビの生放送では禁句です。

写真=iStock.com/35mmf2
※写真はイメージです

Q えっ禁句? なぜですか?

A 生放送は時間との戦いだからです。ゲストが3つと言ってしまった以上、司会者としては3つめまで話を聞かなければなりません。最後まで聞かないと、視聴者がスッキリしないからです。しかし番組が最後に近づいていて時間が押している時に「3つ」と言われた時はつらい。この言葉を聞いた瞬間、実はキャスターは動揺しています。

Q キャスターは顔で笑って、心で泣いている。

A はい。ゲストには聞こえませんが、時間管理をしているタイムキーパーさんはインカムを通して大声をあげています。キャスターとしての要望を言わせてもらえば、ゲストが3つとコメントした場合には、3つめまで一気に簡潔に話してほしい。

時間切れになって、3つめまで放送できないと、視聴者からクレームが来ることがあります。あるいは、3つめまで間に合わせようと、キャスターが話を急かすと、今度は視聴者から「ゲストの話に途中で割り込むな」と批判が来てしまうのです。

テレビは短めに、歯切れよく話すのが基本

Q なるほど。生放送の時間管理の難しさがよく分かります。「3つあります」と言えば、すごく頭が整理されているように見えるので、講演やプレゼンで多用する人を目にしますが、使い方によっては、もろ刃の剣ということですね。

A はい。私も時々、講演や大学の講義に呼ばれますが、その時には、このワードを使うことがあります。指を3本立てて「ポイントは3つあります」と言うと、聴講者のみなさんが、不思議とメモを取り始めます。

しかし、テレビ放送のような時間に制限がある場面では避けるのが賢明です。講演の聴講者は、その人の話を聞こうとして集まっているわけですが、テレビの視聴者は不特定多数の集まりで、必ずしもそのゲストの話が聞きたくて番組を見ているとは限りません。

Q 生放送ではなく、収録番組であれば、後で編集できるので、「3つあります」と言っても差し支えないですか。

A そうですね。ただ、3つを話しても、ほぼ間違いなく編集で短くカットされるでしょう。編集されることで自分の意図と違った形に切り取られるリスクもありますから、言いたいことは1つに絞り込むことをお勧めします。生放送だろうと、収録だろうと、テレビは短めに歯切れよく話すのが基本です。