ついに閉店に追い込まれる

決意からさらに3カ月後、2人の店から少し離れた場所に「獏森の爆盛」をオープンさせました。

製麺機を導入し、2人の店にはなかった自家製麺を提供したところ、評判は上々。1日100杯を売り上げるようになり、月商は約220万円、利益は約25万円となりました。大森さんと目雅森さんの店は、行列が減ってしまいました。

それから2年後、大森さんの店はすっかり行列がなくなり、ついに閉店に追い込まれました。

この事例では、ブルーオーシャンだった二郎系ラーメンは、あっという間にレッドオーシャンに変わってしまいました。どうしてこうなったのでしょう?

飲食店の開業は簡単

理由は1つ。飲食店の開業は簡単だからです。①食品衛生責任者を設置する、②飲食店営業許可を取得するというプロセスだけで、小規模飲食店は開店できます。

料理は別として、準備期間は1カ月あれば十分です。

わかりやすい行列がなくなるまで、似た店の出店は続くでしょう。

特殊な国のエスニック料理など、簡単に真似できないジャンルでなければ、どの地域の飲食店でも、おそらく似たようなことが起こります。

ちなみに、筆者が自分のお店「ドラゴンラーメン」を開店した後、近隣に①煮干などの乾物を扱う会社による出汁ラーメン、②和食専門店の日替わり魚介ラーメンが1年以内にオープンしました。

これらは、当店の成功を見て参入したわけではなく、たまたま時期が重なっただけです。儲かりそうな業界は、より多くの参加者を引きつけます。

後発者は先行者に勝つための工夫を凝らして参加します。また、後発者は資本があるパターンが多いため、設備やスタッフ面でも有利です。

石動龍『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)

激しい競争にさらされる業界で勝ち続けるには、強いブランド価値を確立する、後発者が真似できない高いクオリティを保つなど、有利な状態をキープしなければなりません。

そのために必要なことは、「日常的にデータを分析し、臨機応変に対応すること」です。

売上が落ちている、原価が上がっているなどの不利な状況を数値化して見えるようにし、適切な手を打ち続ける必要があります。

そして、そのデータを得るためのプロセスが、日々の会計になるわけです。

関連記事
ついに福岡で「トンコツ系」が少数派に転落…業界を震撼させる「豚骨ラーメン離れ」の3つの理由
なぜ和歌山県で「1億円プレーヤー」の農家が増えているのか…東大教授が絶賛する「野田モデル」の画期的内容
なぜ北海道は「セブンよりセコマ」なのか…道民に圧倒的支持されるコンビニの「3大すごい」
「使えない」とされた人が集まった…従業員の6割が障害者、9割が女性というチョコレート店の「新しい働き方」
ユニクロとは「真逆の戦略」で大成功…機能性を売りにしない女性アパレル「ハニーズ」が絶好調な安さ以外の理由