新しいビジネスで新参者が成功する条件は何か。「WAGYUMAFIA」代表の浜田寿人さんは「異分野から和牛ビジネスの世界に飛び込んだ際、初めから海外を意識し、和牛の価値を世界に売り込むことを『センターピン』に定めたのが成功のカギだった。日本発で、世界を狙えるニッチカテゴリーは、和牛以外にもまだたくさんあるはずだ」という――。(第3回/全5回)

※本稿は、浜田寿人『ウルトラ・ニッチ』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

ニッチなマーケットの可能性

門外漢の僕が和牛ビジネスに参入するにあたり、非常に大事だと痛感したのは、センターピンをどこに定めるか、ということでした。

情報収集を進めると、いろいろなことがわかってきました。当時、海外での和牛ビジネスは始まったばかりで、まだ誰も儲かっていないということ。そして、海外で和牛を高く売る、外国人に高く買ってもらう、食べてもらうことはできていなかった、ということでした。

もちろん、その仮説は最初から持っていました。価値ある日本の和牛を世界に売りに行く。肉の巨大ビジネスはたくさんありますが、和牛という極めてセグメントされたニッチなマーケットでは、ビジネスはまだまだ活性化していない印象がありました。

だからこそ、たくさんの人に会い、いろいろな現場を見せてもらうことで、どうしてそうなっているのかを見つけに行ったのです。

肉
写真=iStock.com/Vladimir Mironov
※写真はイメージです

「海外を意識するしかない」

準備の段階で確信したのは、「海外を意識するしかない」ということでした。

「海外に和牛を売る。しかも、海外で一番高く売る。外国人に一番食べてもらえる。そういう存在になろう」

これを、僕の和牛ビジネスのセンターピンに据えよう、と。

とくに、その当時、値段の高い和牛が苦戦しているという実情がありました。世界各地の牛と比較すると和牛は高すぎて売れない、と考えていたのかもしれません。高い和牛を売るノウハウが不足していたのかもしれません。いずれにしても、高い和牛は売れていなかったし、食べてもらえていなかった。

しかし、視点を変えると、海外では高額な高級素材は決して珍しいものではありません。

世界のトップレストランでは、イタリアアルバ産の白トリュフ、ロシアのベルーガキャビア、フランスブルゴーニュのワイン、ロマネ・コンティなどびっくりするような値段のものがありますが、これは仕入れ値そのものがそもそも高いのです。

ところが、最高級の和牛である神戸ビーフでもそこまでにはなっていなかった。

ワインのロマネ・コンティは15年前、僕が映画ビジネスをしてプロモーション用にと買ったときは1本25万円でした。それが今は軽く200万円を超えています。