気持ちの切り替えは大人から

ところが、大人側に余裕がないと、叱ったあと何となくバツがわるくなって、フォローを省略してしまうことがあります。これがよくありません。

こどもは嫌な気持ちで混乱したまま放置されるわけですから、安心とはかけ離れた状態になります。それでは絆は結べないままになるばかりです。

強く怒ってしまったのはなぜなのか、何がよくなかったのかを、ちゃんとこどもに伝えてあげてください。

怒ってしまったタイミングからフォローまでの時間差は、あまりないほうがいいでしょう。

年齢が上がれば翌日でも受けとめてくれるかもしれませんが、小さいこどもであるほど、すぐのフォローが重要です。

あなたが自分の気持ちに素直に向き合えば、フォローは難しくありません。しっかりこどもをフォローできれば、それが同時にあなた自身の精神安定にもなります。

そして実は、こうした場面で“こどもの気持ちの切り替えを主導する”ことが、愛着の絆を結ぶ大切なポイントでもあるのです。

ただ褒めても、成長につながらない

困ったを増やす接し方③ たくさん褒めて甘えさせる

最近は育児や教育の現場でもよく耳にする「褒めて伸ばす」という考え方。専門家も「こどもは叱ってはいけない、褒めるのがいい」とよく言います。

しかし、愛着の問題を抱えるこどもの場合、そう単純ではありません。ただ褒めてもその子の成長にはつながらないですし、褒め方を間違えるとちょっと大変なことになるからです。

愛着の問題を抱えるこどもは、自分から「褒めて」と要求することがあります。安心・安全の基地がないせいでつねに安心感を求めているため、「見て見て! すごいでしょ!」と相手にアピールして要求に答えてもらうことで、一時的にポジティブな感情を得ようとするのです。

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ただ、このポジティブな気持ちは持続しませんから、要求はすぐにエスカレートします。こどもからの「褒めて」に応えてしまうと、「これも褒めて」「もっと褒めて」と、欲求がどんどん強くなってしまうのです。

もちろん「褒められたい」というのは人の自然な欲求ですから、それ自体を否定するつもりはありません。ただ、こどもが大人に「褒めさせる」という状況をつくってしまうとよくないのです。

前項でお話しした命令がエスカレートしていく現象と同じで、褒めることがいつのまにか「おだてること」にすり替わり、支配関係に発展してしまうリスクがあります。