月の砂はとても効率よく太陽光を遮ってくれる

しかも、さまざまな大きさや形状の砂粒の日除け効果を計算してみた結果、月の砂(レゴリス)はとても効率よく太陽光を遮ってくれることがわかりました。月から砂を打ち上げるのは、一石二鳥なのです。

地球のために月を削って砂を打ち上げ続けることの倫理的な問題もありますが、これによって地球がむしろ寒冷化してしまっては困ります。しかし、その心配はほとんどないようです。太陽の光や太陽風によって砂は時間が経てば吹き流されて日除けの役目を果たさなくなるので、砂の打ち上げをやめればまた元通りの太陽光が地球に降り注ぐことになるからです。

こんな突拍子もない案を考えたブロムリーさん、もともとの研究テーマは惑星の誕生メカニズムです。恒星は自分で光っている天体、惑星はその周りをまわる自分では光らない天体というのは基本的な知識ですが、惑星はどのようにできるのでしょうか? 

実は、惑星は生まれたばかりの恒星のまわりでμm* サイズの砂粒が集合して大きくなっていくことで作られます。惑星がまさに作られているときには、恒星のまわりには大量の砂粒が浮かんでいて、地球から見ると恒星の光が隠されて見えるわけです。これが、地球温暖化を防ぐ「砂粒の日除け」のアイディアのもとになったとインタビューでブロムリーさんは語っています。

とはいえ、実際このアイディアが実用化されるかと言えば、その可能性は高くないでしょう。今回の論文は、研究者が自分の専門知識を活かしてちょっと真面目に遊んでみた結果、というところでしょうか。

* μm(マイクロメートル)=1mm の1000 分の1

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