「娘にしないことはしない」がガイドラインでいいのか?

ドラマ放送後、この「娘にしないことはしない」が、クドカンによるセクハラガイドラインだ! とでもいうようなスクリーンショットや動画がX(旧ツイッター)で拡散された。「なるほど! そう考えたらいいのか」と感心した人も多いようだ。でも「娘にしないことはしない」という判断基準がこのように広がっていいのだろうか?

あまりの拡散ぶりを見てモヤモヤしたため、わたしも引用リポストしたところ、翌朝2.1万いいねがついており、この件への関心の高さがうかがえた。誤読だ、連続ドラマなので今後の展開を待て、こんな切り取りをされたらクリエイターは何も言えない、という批判もあった(それもわかる)。

写真=時事通信フォト
「不適切にもほどがある!」で主人公の市郎を演じる阿部サダヲ。第44回エランドール賞授賞式(東京都新宿区、2020年2月6日)

それより驚いたのは、「自分も肉親(父親など)から嫌な目に遭ったことがあるから、この言い方じゃ性被害がなくならないのがよくわかる」という趣旨の、切実なコメントが数多く寄せられたことだった。彼女たちの体験をひとつずつ読みながら、悲痛に感じた。

日本の女性の40%が18歳までに性被害に遭っている

ここで「性被害」に関する数字を見てみよう。

なお、平成初期には「セクハラ」と呼ばれていたそれは、この40年近くを経て、ちょっとおどけたニュアンスも含む「セクハラ」ではなく、ようやく正しく「性加害」「性被害」や「性暴力」「性犯罪」と呼ばれるようになった。

昨年、故・ジャニー喜多川の性加害について告発が相次ぎ、栄華を極めたジャニーズ事務所が半年足らずで解体に至ったことは、みなさんも記憶に新しいだろう。いまはもう、「課長、それセクハラですよ〜」とやんわり指摘してもらえるような時代ではない。人事に通報されて一発アウトだ。

もしかすると男性ならこう思われるかもしれない。

でもさ、性被害って、そもそもそんなに多いの? 特殊なことなんじゃない? そもそも誰から誰に行われるの? 電車での痴漢? 通りすがりの犯行?

そうではない。性被害は日常にあふれている。2022年に内閣府が行った初の調査では、日本の16歳から24歳の若年層のうち、およそ4人に1人が「何らかの性暴力の被害に遭ったことがある」と回答している。男性を含めた調査でさえ、こうなのである。

日本では18歳までに、40%の女の子が痴漢や裸の写真撮影などを含む何らかの性被害を受けているというデータもある。世の多くの男性は、残念ながらこれほどまでに性被害が身近なものだということを、ご存じないのではないだろうか?