日本企業の「残念なカルチャー」

日本の企業でも“個人の強み”を活かすことの重要性が語られることはある。しかし実際に、強みが発揮されて高い成果を出した組織は少ない。残念ながら日本は、“強み”より“弱み”にフォーカスするカルチャーが根強い。

会社では組織の弱みを正して、全体の平均点を上げようとし、採用でも「◯◯ができない」と弱みばかりを問題視して強みのほうはあまり評価しない。アメリカのカルチャーでは、明確な強みがある人材の弱みなど、ほとんど気しないのだ。

日本人は小学生の頃から「苦手科目を克服して平均点を上げよう」という発想が染みついている。自分についても他人についても、欠点や弱みがすぐに意識される。外国に比べて英語を話せない人が多いのも、「発音や文法が完璧でなければ話せない」という意識が邪魔しているからではないか。

「弱み」は無視して「強み」に目を向ける

ドジャースの大谷翔平選手が、1月に全米野球記者協会の夕食会に出席し、英語でスピーチして多くの人から称賛された。昨年まで所属したエンゼルスの各関係者に感謝を述べてはじまるスピーチは素晴らしい内容で、リズムのいい英語で堂々と話す姿に筆者も感激した。メジャーリーグで活躍した日本人選手のなかで、英語の上達はトップクラスだ。

ところがSNSでは、海外で活躍する日本人アスリートの英語スピーチに対して批判的な意見を見かけることがある。完璧な英語で話せないなら、日本語で話すべきだ、といった内容だ。スピーチの内容ではなく、英語力を問題視するのは日本人ぐらいだ。日本人らしい完璧主義の発想から出たものだろう。

筆者がシカゴ大学のビジネススクールに留学したとき、中国やインドからの留学生がどんどん挙手して発言するのに対して、日本人の発言は目に見えて少なかった。英語力にあまり差はないのに、完璧に話せないからと尻込みする人が多かったのだ。

英語で話すときに重要なのは、発音や文法ではなく、話の内容だ。価値ある話なら、相手はリスペクトして一生懸命に耳を傾けてくれる。

日本人は弱みばかり気にして、強みを活かせないことが多い。日本の国際競争力を高め、グローバルに存在感を示すためにも、“弱み”から“強み”へというパラダイム転換が求められている。

筆者作成
(構成=伊田欣司)
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