ただ、本当は3日で終わる仕事に3週間かけていると、「仕事が遅い」「中断して放置するとは何事か」と受け取られかねません。そこでおすすめしたいのがマルチタスクです。
複数の仕事を同時並行で走らせると、仕事Aを中断して熟成している間に、ほかの仕事Bを進めることができます。仕事Bを熟成するときは、新たに仕事Cをしたり、仕事Aにもどってもいい。いずれにしても自分の稼働率100%を維持したまま、仕事を寝かせる時間をしっかりと確保できます。
一方、一つの仕事を完結させてから次の仕事に取り掛かる直列型のシングルタスクでは、仕事がABCと重なった場合、時間的制約が強くなり熟成期間を十分に確保することが難しくなります。もし熟成期間を取れても、その間の自分の稼働率はゼロになり、効率は落ちていきます。
1日のスケジュールも、マルチタスクで対応したいところです。第3回で、集中をキープするためには、自分の内的リズムや外的要因に合わせて、そのときベストな種類の仕事に切り替えるべきだと解説しました。実はそれが可能なのもマルチタスクで仕事を進めているから。シングルタスクだと、気分が乗らないときにもその仕事と無理して対峙するか、思い切って休憩するかの2択になってしまいます。つねに絶好調で仕事をしたければ、マルチタスクは必須の流儀なのです。
横田尚哉(よこた・ひさや)
改善士。世界最大企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)の価値工学に基づく分析手法を取り入れて、総額1兆円の公共事業改善に乗り出し、10年間でコスト縮減総額2000億円を実現させた。「30年後の子供たちのために、輝く未来を遺したい」という信念のもと、そのノウハウを潔く公開するスタイルは各種メディアの注目の的となっている。全国から取材や講演依頼が殺到し、コンサルティングサービスは約6カ月待ち。また、「形にとらわれるな、本質をとらえろ」というメッセージから生み出されるダイナミックな問題解決の手法は、業務改善にも功を奏することから「チームデザイン」の手法としても注目が高まっている。