みなさんは受け取ったメールの返事をいつ出しますか。私は原則的に読んだら5秒以内に返信します。すぐに返せば「了解」の一言で済むケースが多いからです。ただし、内容を吟味したいメールに関しては別。返事を書く余裕があっても、メールを受け取った旨だけ返信し、わざと未読の状態に戻して未読フォルダに置いておくようにしています。返事を意図的に遅らせることで、自分の中で知的熟成が起きることを期待しているのです。
仕事をやりかけのまま、あるいは一度完成された後で寝かせる時間をつくると、何が起こるのか。仕事をしていない間も問題意識が勝手に働いて、思考の材料を集めてくれます。その結果、まるで水蒸気が空中のチリを頼って水滴になるように、思考の結晶化が始まってアイデアが創造されていく。これが知的熟成です。
中国・宋の時代の政治家、欧陽修は、考えを練る場所は「三上」が適しているといいました。三上とは、馬上・枕上・厠上のことです。つまり移動中や睡眠中、トイレにいるときにアイデアがひらめくというわけです。これぞ知的熟成。目の前の課題をいったん手放して自由になるからこそ、発想が豊かになるのです。
仕事を計画するときは、知的熟成のために、隙間時間や中断期間を意図的につくるべきです。私の場合、3日間で終わる仕事は3週間、3週間で終わる仕事は3カ月の余裕を持ってスケジューリングをするようにしています。時間リスク対策だけなら1.4倍で十分ですが、時間を長めに見積もるのは、リスク対策だけでなく、知的熟成の時間を考えると、ざっくり5~10倍の時間は欲しいからです。