仕事の取捨について考えるとき、私は建設コンサルタント会社に新卒で入社してきた若いエンジニアのことを真っ先に思い浮かべます。彼に与えられた仕事は図面の色塗り。地図に建設予定の道路が描かれて、それをプレゼンで説明しやすくするために、ひたすら色を塗ることを課せられたのでした。

半年経った頃、彼は単調な仕事に耐えかねて「もっと技術者らしい仕事をしたい」と訴えてきました。そこで私は図面を指さし、「この図面の縮尺は? このカーブは半径何メートル?」と質問をしました。彼は即答できず、図面に記入されている数字を読み上げようとしました。その様子を見て、彼がこの作業のファンクションを自分のものにしていないことがわかりました。