日本の司法を批判する声に耳を傾けよ

CNNテレビが今年1月、静岡県富士宮市で居眠り運転によって2人を死亡させる事故を起こした米軍人が、日米地位協定に基づいて日本で禁錮刑に服した後、残りの刑期を米国で服すべく米国に移送され、すぐに仮釈放されたと報道した。米軍人は高山病が事故原因だと主張しており、多額の損害賠償も払ったのに実刑だったことを不満に感じ、日米地位協定に対する日本人の不満のスケープゴートにされたとみているようだ。

妻とともにCNN番組に出演した元軍人は英雄扱いされ、妻は日本の判決は厳しすぎで、日米地位協定を改正して米軍人の権利が守られるべきだと発言したという。

日本の世論は、バイデン大統領までもが米国への引き渡しを求め、釈放されたことを批判しているし、米国での報道は被害者への配慮に欠けている。しかし、日本の司法についての言い分が無茶かどうかは冷静に精査すべきだ。現在の前近代的な司法制度をそのままにした状態で、日米地位協定を欧州並みにするのは難しい、と私は指摘してきたが、日本人はこの議論を避けている。

巨悪への対処は立法によるべき

離婚後の子どもについて共同親権の制度がない(民法の改正により創設されることになりそうだが、国際的な常識に反した限定的なものに留まる危惧が強い)とか、日本人妻による海外からの子どもの違法な連れ戻しが横行し、離婚すると、男性の親が子どもに会えなくなるケースが多い異常さが国際問題になっている。

そのなかで、法務省に出向した裁判官が、政府や国会が政治主導で既存の制度や運用を国際常識に合うように改正することを妨害しているのでないかと批判され、安倍元首相が最晩年に改善へ取り組もうとしていた。こうした姿勢も、安倍氏が司法関係者から嫌われた原因のひとつになった。

こうした問題を抱える日本の司法制度をどのように変えていけばいいのか、最後に私の提言を紹介したい。従来の制度では、処罰しにくい巨悪への対処は、基本的には立法に依るべきであり、気まぐれに身柄を拘束して罪に問うよりも、情報公開の徹底で犯罪が起こりにくくすることが先決だ。

マイナンバー制度強化や政治献金を銀行振り込みに限定することによる金融資産・取引の透明化は、最大の武器になるが、反対しているのはいわゆるリベラル派というのがこの国の異常なところだ。少額のものも、一定の年月ののち公開することも一考だと思う。

政治、経済、いじめ、性犯罪といった案件は、当事者の言い分のどちらが正しいかとか、事実関係ははっきりしていても処罰するべきかどうか自明でないことが多く、むしろ民事裁判のように対等な立場で主張をぶつけ合うほうが向いている。

こうした案件では、裁判による有罪判決が確定するまでは「罪人」とは扱わない推定無罪の考え方を徹底することが必要だ。むろん、今回のパーティー券事件のように検察のリークによって逮捕される前から犯人扱いするようなことはあってはならない。それが、国際的に良識にあったやり方だ。

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