検察の介入で新しいビジネスモデルが潰される

ロッキード事件でも、最高裁がロッキード関係者に免責特権を認め、特別捜査部の検事が渡米し、事実上の司法取引を行って超法規的に得た証言を証拠にした。

田中角栄氏の行為は政治的にはよくないが、前例のない職務権限を設定したり、異例なやり方での証言を使ったりするのは、異常だったし、丸紅は「単なるメッセンジャー」として罪状が軽くなることを期待し、検察の意に沿った証言をしたようだ。

この日本の司法についての問題は、拙著『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)で包括的に取り上げた。

リクルート事件でも、従来は悪いことと認識されていなかった未公開株の割り当てを罪に問い、新しいビジネスモデルを潰した。ホリエモンのライブドアや村上ファンド、ウィニー事件(ファイル共有ソフト「Winny」の著作権法違反。最高裁で無罪確定)でも同じだ。

東京地裁が2023年12月に「逮捕も起訴も国家賠償法に照らして違法」と断じた大川原化工機冤罪えんざい事件では、被告の一人は勾留中に体調を崩し、病死した。

「推定無罪」は日本では死語

新しいビジネスで儲け、既得権益にとって脅威になった企業を、世間では賛否両論があるにもかかわらず、検察が潰してきた。出る杭は打たれる日本社会の宿痾しゅくあは増幅され、ベンチャーの発展が遅れ起業家の社会的地位が毀損きそんされ、日本経済を低迷させた。

しかも、否認すれば証拠隠滅の可能性を理由に、拘置が続く「人質司法」で自白を引き出し、起訴されたら有罪率は99%を超える。「推定無罪」は日本では死語だ。

しかも、日本では逮捕が刑罰以上の打撃となる。逮捕による不名誉、勾留中の行動制限の厳しさも異例だ。逮捕されず在宅事件で執行猶予の有罪になるより、逮捕されて身柄事件となり起訴猶予や不起訴、無罪になるほうが、ダメージが大きいほどだ。

「逮捕」という、いかにも犯罪のイメージが強い言葉は「身柄拘束」に、「容疑」や「取り調べ」も「可能性」や「事情聴取」などに改めるべきだ。

こうした日本の司法の問題を、世界中に知らしめたのは、日産自動車のカルロス・ゴーン会長の逮捕だ。