「親中派」の国民党を支持する人たち
一方、国民党はもともと反共産党を掲げていましたが、2000年代に入ってから世界の経済大国として台頭していた中国と親しい関係を築いていきます。野党に転落していた国民党は2005年に、長く争ってきた中国共産党との間で「国共和解」に踏み切ります。
そして、2008年の総統選挙では陳水扁政権が汚職問題でイメージダウンしていたことも追い風になり、国民党の馬英九が当選して政権を奪取します。馬英九政権下において、中国と台湾の関係はグッと近づいていきます。経済成長を遂げた中国とうまく付き合っていくべきだ、という国民党の主張が共感を得たところもありました。
ただ、そのスピードが少々急すぎてしまったようです。中国との中台サービス貿易協定の国会承認をめぐって、手続きに不満を持った若者たちが抗議の声を上げたのです。
これが2014年に起こった「ひまわり学生運動」です。この運動によってレームダック(死に体)化した馬英九は、2016年の総統選挙で民進党の蔡英文に敗れることになりました。
このように、中国との関係性をめぐる考え方の違いが、それぞれの時代のバランス感覚によって、政権交代をもたらしているといえるでしょう。
そしてやはり台湾と中国の経済関係は太いものがある。反中国の立場をとる民進党の政権が続くと、中国は圧力をかけてくるため、情勢が不安定になって、商売がしにくくなってしまいますよね。そうなると、国民党を選択するビジネス界の人たちは多くなります。こうした理由も、国民党が選挙で生き残る要因となっています。
国民党と民進党の選挙戦略における差
ちなみに、選挙戦略という面だけで見ると、やはり国民党のほうに一日の長を感じます。国民党は民進党に比べて、組織がしっかりした選挙を行います。地方にはとくに人脈の広い大物と呼ばれる人材を有していて、しっかりと議席を稼いでいます。
民進党は歴史が浅いぶん、地方組織がまだまだ十分に育ち切っていない部分もあり、政党としての成熟度が足りない。いわば、したたかさが足りないのですね。日本では、民進党の人気が高いため、どうして台湾の人たちが国民党に投票するのか十分に理解されないところがありますが、台湾に暮らしてみると、国民党の「一日の長」がなお役立っていることを実感します。
ただ、国民党のイメージはどうしても良くない部分がある。「中国のエージェント」のように思われがちなのです。そこで地方選挙では、国民党の候補者は「台湾を守る。中華民国は崩さない。中国には統一されない」と表明する。この主張は民進党政権のそれと大差ありません。
そして、自分たちが国民党の候補であることをはっきりとは言わないんですね。地方に根ざした政治家は人物本位で投票してもらえれば負けない、と考えているわけです。