最高級和牛の衝撃
実際、最高級の和牛を初めて食べたときの衝撃を、今でも覚えています。
映画の配給をしていた頃、僕が手掛けた食のドキュメンタリー映画『フード・インク』の予告編をご覧になったある方から連絡をいただきました。その人は、宮崎県で最高級の和牛を育てている、尾崎牛の生産者・尾崎宗春さんでした。そして、彼のもとを訪れる機会を偶然、得たのです。
尾崎牛は、宮崎県で肥育から販売までを尾崎さんご本人が手掛ける、子牛から育てたブランド牛の名前です。尾崎さんはアメリカで畜産を学び、その後宮崎に戻り、宮崎牛ブランドでナンバー1を取り、晴れて自社の牧場で独自に配合した飼料によって、自分の名前を冠した最高級の和牛を育てていました。
牛肉商の名前を冠したブランド和牛は、国内では尾崎さんが先駆けです。今はWAGYUMAFIAでもメインの和牛として扱っているのがこの尾崎牛です。
尾崎牛1キロをなんなく平らげてしまった…
尾崎牛を食べるまで、和牛はフォアグラのように強制的に給餌して、無理矢理に霜降り(サシ)を作っているのだろうと僕は思っていました。
尾崎さんに会ったとき、「霜降りの焼肉はときおり食べますが、和牛はどうにも重くて。お腹が痛くなることもあります」と言ったら、こう返されました。
「まだ和牛素人だね。本当にいい和牛はまったく違う。それを知らないだけだからしょうがない。今日は一人1キロ用意したから、食べていきなさい」
1キロも食べられない、と思いましたが、尾崎さんは厩舎隣にある自宅の庭で、自らが一から調理し尾崎牛でいろいろな料理を作ってくれたのでした。
尾崎さんのお話を伺って食べる尾崎牛の料理の数々。ついにはなんと全部、平らげてしまった自分がいたのです。