「新しい支持層」も「他の野党との関係性」も失いかねない
2022年に亡くなった元新党さきがけ代表の武村正義氏が、著書『小さくともキラリと光る国・日本』(光文社)にこんなことを書いていたのを思い出す。
「政界再編の過渡期においては、政党の体質、政治手法が、これまで以上に注目を浴びる。(略)党内の空気がリベラルであるのか、それとも親分子分的であるのか、統制的であるのか。それらを国民がどう感じるか。ここのところも選択の大きな要素となるはずである」
裏金事件に揺れる自民党が国民の支持を失いつつあるのも、政策以上に党の体質や政治手法が嫌われているからだろう。
共産党に限らず、党の低迷期に自らの原点を見つめ直すのは大事なことだ。だが、時代の要請を無視した過剰な先祖返りに走れば、これまでの「現実・柔軟路線」を通じて党への警戒感を解きつつあった「新しい支持層」を手放しかねない。「目指す社会像」をともにできるはずの他の野党との「共闘の再構築」も困難になる。
現在共産党に批判のまなざしを向けているのは、前回衆院選で「立憲共産党」批判を浴びせたような、いわゆる保守層ではない。むしろ、共産党の基本政策と親和性が高く、同党が「共闘」の対象と想定しているような中道・リベラル層(この言い方は好きではないが)であることに思いを致すべきではないか。
過剰な原理主義に寄りかかりすぎてはいけない
党大会を終えて永田町に戻った田村氏は、大会で見せた硬直性を少し和らげたかにみえる。通常国会初日の26日、各党へのあいさつ回りに臨んだ田村氏は、党大会で「悪政4党」とこき下ろした日本維新の会の馬場伸幸代表に「(裏金事件の)真相究明は国会の責務だ」、国民民主党の玉木雄一郎代表に「力を合わせて政治を変えたい」と呼びかけた。
日本経済新聞のインタビューでも、次期衆院選に向けた「野党共闘」に関し「すべての政策を各党が一致させる必要はない。一致できるところで力を合わせるべきだ」と述べた。立憲民主党の泉健太代表が最近掲げている「ミッション型内閣」と言いぶりはあまり変わらないのではないか。
この柔軟性を維持してほしい。
政党には守るべき歴史も、譲れない基本政策もあるだろう。それこそ多様性の時代なのだから「日米安保条約破棄」をうたう政党もあっていい。
だが、同時に国政政党として、すでに耐用年数を過ぎている自民党政治を終わらせるために、現時点で自らに何が求められているのか、常に考えて行動してほしい。過剰な原理主義に寄りかかりすぎて、日ごとに激動する政治状況を見誤らないでほしいと思う。
大変厳しい道だと思うが、同世代の女性である田村氏が今後、どのように党のかじ取りをしていくのかを見守りたい。