日本共産党のトップが23年ぶりに交代した。「野党共闘」にはどんな影響があるのか。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「共産党の綱領に書かれた政策の大半は、他の野党の主張と重なる。目指す社会像は野党各党の間で、かなり共有されている。だが、異論を『指導』で抑えてしまう政党文化には問題がある」という――。
第29回共産党大会であいさつする田村智子氏=2024年1月18日、静岡県熱海市
写真=時事通信フォト
第29回共産党大会であいさつする田村智子氏=2024年1月18日、静岡県熱海市

初の女性党首、23年ぶりの委員長交代

1月18日に4日間の日程を終えた第29回共産党大会は、田村智子氏の委員長就任という「23年ぶりのトップ交代」が大きく注目された。102年の党の歴史で初の女性党首が誕生したことは、率直に歓迎したい。

だが、トップ交代という大きな節目にもかかわらず、党大会が共産党の新たな時代を切り開いたとは感じられなかった。むしろ、この20年あまり「現実・柔軟路線」を掲げ、他の野党と「共闘」しつつソフトイメージを構築し、政権参画の可能性さえ視野に入れてきた流れから一転、組織が大きく「先祖返り」しているように思えた。

長い歴史を持つ日本じゅうの組織で現在起きていることかもしれないが、共産党も党内で「伝統的価値観」と「新たな価値観」のせめぎ合いが生じていると感じる。党勢が低迷すればするほど、伝統的価値観が強く前面に出てきて、時代の変化に対応できなくなってしまう。そんな苦しい現状を感じさせる党大会だったと思う。

過去には「たしかな野党」で党勢拡大

少し歴史を振り返ってみたい。

1990年代初めの選挙制度改革によって、他の野党が二大政党の一翼を担うべく再編に明け暮れるなか、共産党は「たしかな野党」をうたい、こうした動きから距離を置いてきた。自民党と、かつて自民党政治のど真ん中にいた小沢一郎氏率いる新進党の「保守二大政党」状態だった90年代半ばには、共産党が「総与党化への唯一の対抗勢力」として、党勢を拡大したこともあった。