「専門バカ」と「バカ専門」
急いで訂正しなければならないのは「専門バカ」が悪いわけではない、という点である。
「専門バカ」と批判する側こそ「バカ専門」だ、と、わたしは大学生のころ教師に言われた。何かの専門になる、それもバカと言われるほど、のめり込まなければ、その道を極められない。
何のスペシャリストにもならず、あるいは、なれず、文句だけを並べるのは「バカ専門」ではないか。これが、大学時代の教えだった。
みずからの殻に閉じこもる「専門バカ」と、ダメ出しするだけの「バカ専門」、その交わらない二項対立を続けるだけでは、いつまでも、今回のような炎上騒動は繰り返されるだろう。「プロ経営者」だから万能なわけでもなければ、全員が無能なわけでもない。
今回の本多社長の炎上は、彼が見せた「万能感」に問題がある。
自分は何でも知っているし、間違っていない、そんな思い込みは、彼のピカピカの経歴と「プロ経営者」としての自覚がなせる業だったに違いない。
こう書いている私にしても、社会学者という「専門バカ」であって、経営については「バカ専門」なのだろう。だからこそ、誰もが自由にモノを言える環境は貴重なのではないか。
餅は餅屋、という言葉は、人任せにして責任を逃れる免罪符ではない。反対に、それぞれの持ち場でプライドと責任を持って、謙虚な自信を持ちながら堂々と仕事をする。そんな姿勢をあらわしている。
「プロ経営者」を必要以上に持ち上げるのでも、不当に貶めるのでもなく、必要に応じて出てくれば良い、それだけのことではないか。
それを気づかせてくれたところに、今回の炎上から得られる教訓がある。