時間と同様、その使い方が気になるのはお金である。私の周りを見ても、高い年収を得ている人のお金の使い方のポリシーは、モノやサービスの絶対的な価格よりも、そこから生まれる「機会」を重視している印象を受けることが多い。そのような人は社会や経済の動向、マーケットの流行などからも、積極的に機会を見つけようとする傾向がある。
「気になる本や雑誌は、迷わず買うようにしている」と回答した人が、1500万円以上では約5割を占めるのに対して、400万円台では32.7%と18%以上上回っていることからも、この特徴が浮き彫りになる。「モノを買うときは、自分だけがわかるこだわりの逸品でなく、みんなが欲しがる商品を買うようにしている」と回答した人が1500万円以上で13.9%、400万円台で10%という差からも、モノを買う目的のひとつがマーケットが何を欲しがっているのかを知るためであることが窺える。
また、「最新のPC、電子書籍端末、スマートフォンといった電子機器は、話題のうちに買って、まずは使ってみる」「新しいモノを利用することは勉強になるので、多少ムリをしてでも買う」人が1500万円以上だとともに2倍以上になっている。これらを実践している人は、本や雑誌を読んで知っていることと、実際に体験するのでは情報量に雲泥の差があることをわかっており、人の評判ではなく、自分の目を信じることに重きを置いているといえる。
「疲れたときは、マッサージに行くなど、お金を使って、早めにメンテナンスをする」が「あてはまる」のも、1500万円以上が400万円台の2倍以上になっている。体調は仕事のパフォーマンスに直結するので、マッサージのようにお金がかかることであっても、効果が得られるのであれば積極的に活用する。お金は節約するものではなく、より多く稼ぐために使うということだろう。
物事が間違ったほうにいったとき、その原因を自分に見つけるのか、他人の中に見つけるのかといったことは、その人の思考のクセといっていいだろう。このクセは仕事に限らず、生活全般においても重要な位置を占めているように思う。
「何事も『人のせい』ではなく、『自分のせい』と考え、行動するようにしている」に「あてはまる」と回答した人は、1500万円以上で全体の約19%を占め、400万円台よりも10ポイント以上多い。「『あの人がこうしてくれればよかったのに』と思うことがよくある」という質問に「あてはまらない」と回答した人は1500万円以上だと10ポイント近く多かった。また、「上司や部下に関するグチを言うことが多い」という質問に「あてはまらない」と回答した人は、1500万円以上で400万円台の2.4倍にもなった。
要するに、高年収者は、くよくよしないし、グチを言わないのである。彼らは自分でコントロールできないことに関しては前提条件として受け入れ、それに対する自分の行動を考えることに時間を使っているように思う。他人の中に原因を見つけて嘆くよりも、自分の中に原因を見つけて自分の行動を変えていったほうがよほど建設的であることを知っているのだ。そもそも問題や状況を本気で変えたいと思っているのであれば、すべては自分の問題となるはずである。