「これはすごい」と唸ったシーン

セットや撮影技術など目につきやすい部分で製作費を省かないNetflixクオリティが保たれたことが大きい。

マンガの実写化で議論されがちな再現度という観点では、キャラクターたちの髪型の作り込みにおいて多少甘い部分もあるが、作品の良さを大きく左右するほどのことでもない。175話ある原作を今回は3分の1程度のストーリーにうまくまとめている。

最も評価したいのは、北村の浦飯幽助をはじめ、志尊淳の「蔵馬」や本郷奏多の「飛影」、上杉柊平の「桑原和真」、滝藤賢一と綾野剛の「戸愚呂兄弟」など主要登場人物たちのバトルシーンだ。

画像提供=Netflix
VFXやCGを使いつつも「人間の肉体によるバトル」をメインに表現していた。

「幽☆遊☆白書」ならではの暴力性とエモさを意識した映像が作り出されていた。『君の膵臓をたべたい』が代表作の月川翔監督が中心となり、ドイツを拠点とする世界トップクラスの制作会社であるスキャンラインVFXの協力も得て、俳優とCGクリーチャーを映像加工する高度なVFX技術が駆使されたという。

撮影からポストプロダクション(撮影後の作業)の期間だけで約3年もかけて、完成に至っている。

「ONE PIECE」と「幽☆遊☆白書」の違い

一方で、同じくNetflixが手掛け、原作ファンが世界中にいる点でも共通する「ONE PIECE(ワンピース)」の実写版と比較すると、「幽☆遊☆白書」は惜しい点がある。

実写版「ONE PIECE」の場合はNetflixアメリカ本国発の英語シリーズとして作られているため予算規模は大きく、制作環境も異なる。単純に双方を比較できないが、実写ドラマの観点からみると、「ONE PIECE」にはあって、「幽☆遊☆白書」には足りない部分があった。それは生身の役者が演じることによって生まれる意外性だ。

例えば、実写版「ONE PIECE」では主要キャラクターの「ナミ」に現実世界に存在するようなリアリティ性を持たせている。

容姿こそ原作のイメージとは離れているものの、「ナミ」というキャラクターの本質を理解しやすいものにしていた。製作側の意図的なものだというから、リスクがありながら最適な表現を追求した、攻めの姿勢が潔くも感じた。

画像提供=Netflix
実写版「ONE PIECE」のナミを演じた、エミリー・ラッド。彼女の演技に納得した原作ファンも多かった。

実写ドラマとして勝負するには原作ファンだけでなく、ドラマ好きも囲い込むようなアレンジ力が時には有効であることを証明したように思う。

実写版「ONE PIECE」は全世界配信後、週間グローバルTOP10(英語シリーズ)1位を3週連続で達成し、これまで6300万時間以上視聴されている。このまま伸びていけば、Netflix歴代人気TOP10入りも見込めそうだ。

唯一の日本人俳優として起用されたゾロ役の新田真剣佑がこの作品をきっかけに世界的に人気を集めるなど話題も作り、これも予想以上のこと。こうした意外性が実写版「ONE PIECE」にはある。