病気が治って、やっと迎えた30代。仕事に打ち込める体になった私は、人生3度目の大勝負に出ました。計画どおり軍資金をためにかかったのです。まずは株式上場して、800億円で世界最大のコンピュータ見本市「コムデックス」を買収し、2300億円でコンピュータ業界最大の出版社「ジフデービス」を買収しました。今度は、会社の時価総額が2700億円のときに、3100億円使ってしまったわけです。頭がおかしいと言われましたが、はじまったばかりのインターネットに挑戦していくには、どうしてもこの買い物が必要でした。「コムデックス」と「ジフデービス」は、私の宝探しにおける地図とコンパスのような存在だと思ってください。そして見つけたのが、ヤフーという宝物です。私は、当時アメリカで社員5人ほどの会社だったヤフーの筆頭株主になり、ヤフージャパンを興したのです。
30代後半にはITバブルがあり、絶頂期はすごい体験をしました。株がどんどん上がるから、自分の資産が1週間ごとに1兆円ずつ増えていくのです。たった3日間ですが、ビル・ゲイツを超えこともあります。まさに世界一の大金持ちになった。でも、銀座の三越に行ったって、1兆円出せばお店ごと買ってもおつりがくると思ったら、途端に買い物の喜びがなくなりました。あの頃は金銭感覚がおかしくなった。お金なんていらないなと、本気で思ったものです。そんな体験があったからこそ、金儲けより人に喜ばれることがしたいと、心の底から思えるのだと思います。
でも、その直後にITバブルは崩壊。ネット事業に携わっているというだけで犯罪者扱いされるありさまで、ソフトバンクの株式価値も1年間で100分の1にまで落ちました。お金なんかいらないと思っていたら、本当になくなってしまったわけです(笑)。しかも会社は借金だらけ。40代は、なかばやぶれかぶれな気持ちでの幕開けでした。