裏で現金が飛び交う選挙の実情

そして、もう1つの「収支報告書に書けないお金の使い方をするため」というのはもっと悪質だ。

その典型例が地方議員に渡す裏金だという。

各国会議員が選挙で戦うとき、それぞれの地元に普段から根を張って活動している地方議員の存在は非常に重要だ。

江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で逮捕された前法務副大臣の柿沢未途容疑者(写真=法務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

彼らの存在なくしては、国会議員は十分な選挙運動をすることもできないわけだが、地方議員にきちんと動いてもらうためには、裏でお金を渡さなければならないということが、地域によっては現在進行形で横行しているようだ。

直近では、昨年4月の江東区長選で、木村弥生候補の応援に入った柿沢未途衆院議員が区議らに現金を配ったとして、公職選挙法違反(買収など)容疑で逮捕された。

とある自民党関係者は「こんなものは氷山の一角。ほかにも当たり前のように地方議員に裏で現金を渡している地域はたくさんある。そうしないと地方議員が動いてくれないからだ。大抵の場合は渡した側も受け取った側も黙っているのでバレないが、今回の柿沢氏のように、江東区のゴタゴタした政局が絡んでくると、裏で検察の捜査に協力する関係者が現れ、事件として露呈することになる」と声を潜める。

柿沢未途衆院議員が逮捕された背景

柿沢氏は2021年の衆院選を経て、これまで野党系議員として活動していたところから自民党に入党したばかり。江東区では柿沢家、木村家、元江東区長の故・山崎孝明氏などがいた山崎家が政争を繰り広げる中、柿沢氏は木村氏につくことで江東区長選を乗り切っていた。

こうした背景のもと、柿沢氏は何者かに背後から矢を放たれ、逮捕に至ってしまったという見方もできるわけだ。

収支報告書に書けないお金の使い方は他にもある。

例えば、選挙カーに乗るウグイス嬢の日当は公職選挙法で1万5000円と決まっているが、人気のウグイス嬢だとそれでは受けてくれない人もおり、裏で色をつけてお金を渡している場合もあるという。

また、本来ならばボランティアとして集めなければならない、選挙中の電話掛けの人員などにも、裏で日当を渡しているケースもあるそうだ。

こういったお金の使い方は、資金の多寡によって選挙結果が左右されないように定めている公職選挙法に明確に違反することになる。

しかし、実際の選挙では裏で現金が飛び交っていることもあり、そうしたカネは記録が残る政治資金から支出するわけにはいかず、裏金が使われているわけだ。