「きっとスターになれるんだからね」

やっと16歳になろうかというころ、北公次という芸名もまだないころ、田辺から出て来た少年は夜ごと、寝ている布団の中で世話になっている事務所社長のマッサージとささやきを受け入れた。

「そしてだんだんおれのからだに接する態度が大胆になってくるではないか。

『コーちゃん、がんばるんだよ。きっとスターになれるんだからね、きみは。ぼくも一生懸命応援するよ、そしてジャニーズに負けないアイドルになるんだ』

熱い吐息を吐きかけおれのからだを優しく何度もさすってくる。マッサージと言えなくもなかったが、そのうちに手がおれの下半身に及んでくる。

ジャニー喜多川さんの手がおれの男性器を優しくもみほぐし、巧みな手の動きでおれの男根は意思に反して徐々に波打ってくる。」

「男と女がベッドで営む行為と同じことではないか」

「中学時代、ふざけて体操部で互いの股間を触って騒いだことがあったが、あのばか騒ぎとも違う、これは男と女がベッドで営む行為と同じことではないか。

怖さといやらしさと不安と……。せっかく芸能界にデビューできる近道を手につかんだと思ったその恩人に今こうやっておもちゃのようにもて遊ばれていることに言い知れぬ感情が渦巻いていった。

『やめてください……。ジャニーさん……。いやですよ……ぼく』」

童貞だった北公次はこのとき、あらためて事務所社長が同性愛者だと知った。

写真=時事通信フォト
ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子氏(2023年9月7日、東京都千代田区)