11月30日、プロ野球の楽天イーグルスは複数の選手にハラスメント行為をしていた安樂智大投手(27)を自由契約にした。ライターの広尾晃さんは「早急に事実関係を明らかにし、果断な処分とともに、再発防止策を示した。不祥事への対応として的を射たものだった」という――。
楽天モバイルパーク宮城 2023年4月5日撮影
楽天モバイルパーク宮城(写真=Hotta Akahane/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

楽天イーグルスで起きた異例の事態

11月30日、プロ野球の2023年シーズンの最終日に、東北楽天ゴールデンイーグルスは所属する投手の安樂智大あんらく・ともひろ(27)を保留者名簿から外すと発表した。

プロ野球では、この日までに、翌年度に契約する選手(上限70名)の名簿をコミッショナーに提出する。その名簿から外れたということは、安樂が自由契約になったということであり、楽天イーグルスをクビになったことを意味する。

その理由として球団は「パワハラ行為が認定された」と発表した。

球団の調査結果によると、安楽投手は、公式戦のロッカールームで、倒立させたチームメートのズボンを脱がすなどして下半身を露出させた、「バカ」「アホ」などの暴言をチームメートに浴びせた、忘れ物やミスをしたチームメートから「罰金」と称して現金を徴収したという。

ジャニーズ、宝塚、日大との違い

筆者は危機管理のプロではないが、今回の楽天の対応は、スピード、そして処分内容ともに目を見張るものだったと思っている。

今年、さまざまな分野で、パワハラ、セクハラ問題が話題となった。

旧ジャニーズ事務所では、創業者の故ジャニー喜多川の60年以上にわたる性被害が明るみに出て、会社の解体、運営体制の根本的な改革が進行中だ。

宝塚歌劇団では、宙組に所属する25歳の劇団員が死亡した問題をめぐり、歌劇団に対する批判が集まっている。

スポーツ界では、日本大学がアメリカンフットボール部員による違法薬物事件に対する対応に追われている。

事件の内容や重大性は異なるが、これらの件に共通するのは、不祥事そのものが企業からではなくメディアの報道により発覚していること。さらに不祥事が明るみに出ても、組織、当事者はその事実を隠蔽いんぺいしようとたり、責任の所在を明確にしなかったりして、強引に幕引きを図ろうとしたことだ。その結果、事態は最悪の方向に向かいつつある。