献金がなくても施設を維持できるのか
そこに加えて、K-POPアイドルのコンサートにも使用されることも意外だった。しかし、調べてみると、確かにこの場所ではかつて、「少女時代」や「KARA」のメンバーが訪れて、音楽イベントが開催されたことがあった。そして、注目すべきは、その時に参加したアイドルやアーティストたちは「カルトの施設を利用するとは何事だ」と社会からバッシングをされることもなかったということだ。
実は、日本では旧統一教会は今や「関連イベントに参加する」というだけで、謝罪会見を開かねばいけない「反社会的団体」になっているが、韓国では数多とある新興宗教団体のひとつに過ぎない。もちろん、宗教なので「カルト」とか「異端」と叩く人もいる。が、日本のように「社会の敵」というほどでもないので、教団施設で行われるイベントに「ビジネス」として参加をするアイドルやアーティストも糾弾をされないのだ。
そういう社会ムードだからこそ、このような「旧統一教会タウン」の実現が可能だったのかもしれない。
「私たちは時間をかけて、病院、学校、福祉施設など都市に必要な要素をひとつずつつくってきて、これからも拡大をしていきます。来年に始動予定なのは、天苑宮の奥にある、ビニールハウスのような建物です。これは“HJ花鳥苑”というもので、美しい花とさまざまな鳥の姿を見ることができる施設でカフェも併設しています。そして、もうひとつ動き出すのが“HJクルーズ&マリーナ”です。これは電気で動くクルーズ船が発着する場所で、この船はソウル方面まで行き来します」
と韓国教団本部の幹部職員のキムさんは語る。報道によれば、これらの施設の建設資金は、すべて日本の教会から送られる献金で成り立っているという。しかし、昨今の旧統一教会問題で日本からの送金もとどこおっているという。果たして、この巨大な「旧統一教会タウン」は拡大し続けることができるのだろうか。
連邦議会議事堂のような建物がそびえ立つ
それからキムさんは建物の前にそびえる見事な一本松、文氏が愛してこの木の下で祈祷や信者たちと語り合っていたという「一松亭」の説明をした後、天正宮博物館の内部を案内してくれた。そして、本稿の冒頭で紹介したような、聖地巡礼コースをたどって「天地人 真の父母像」にたどり着いたというわけだ。
「では、これから1階に行きましょう。天正宮博物館は3層構造になっていて、これまでいたところは地下1階になります」
山の中腹につくられたからか、天正宮博物館は階段のような構造になっている。アメリカの連邦議会議事堂のような建物の正面がちょっとした庭園のような空間になっていて、そこから大きな階段が下がってさらに大きな広場があり、「一松亭」はその階段の脇に立っている。我々はその一本松の後ろにある扉から入った。つまり、文氏の信仰の歩みをたどる「体験型ミュージアム」は地下1階にあるのだ。