なぜ、高学歴の親は子育てに苦しむのか

ところが、最近の親御さんの子育ては、その逆を行っているように思えてなりません。私は、小児科医ですが、脳科学や生理学に心理学、さらに教育や福祉の観点から子育てを支援する「子育て科学アクシス」を主宰しています。

もともとは発達障害や起立性調節障害など、ちょっと育てにくいお子さんをお持ちの親御さんに向けてワークショップなどを行っていましたが、最近は、障害はないけれど、子育てに不安を持つ親御さんも多くお見えになります。

今の子育て世代は、受験戦争にさらされてきた団塊ジュニアが中心。相談に来られる方のほとんどが、大学を卒業された高学歴です。皆さん真面目で努力家で、成功体験を多くお持ちで、一生懸命に仕事をしていらっしゃいます。

もちろん、子供思いで、子育てにも余念がありません。自分と同じくらいの学歴をつけさせて、自分と同じくらいの仕事についてもらいたい。いえ、できれば自分を超えてもらいたい。皆さん、仕事も忙しいのに家に帰ってからは子供の勉強に付き合います。塾の送迎もされています。子供は、勉強することが第一優先。そう信じて、一生懸命に子供に向き合っていらっしゃいます。

ところが、なぜか思ったようにお子さんが育たないと、相談に来られるのです。手をかけるほどに悩みが増えていくとも。なかには、不登校や引きこもりになってしまうケースもあります。

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その理由が、親子ともども睡眠不足になっているからなんです。「いえ、わが家はしっかり寝る時間をとっていますよ」とおっしゃる親御さんも多いと思います。大人で5〜6時間、子供で7〜8時間。それだけ寝ていれば十分、と思っていらっしゃる方が多いようですが、まったく足りません。

「どんな世の中になっても元気に生きていく力」をつけるなら、未就学児なら11時間、小学生でも最低9時間が必要です。わが家の就寝時刻は夜の8時が目標で、起床は朝の4時。睡眠時間は、少なくても7時間を確保しています。

大学生になった娘が帰省しても、夜の7時くらいになると、そろそろ寝なきゃね、というムードが漂い始めます。先に「寝るね」と言ったほうが勝ち。最後に残った人が食器の後片付けをすることになっていますが、どうしても眠い場合、食器洗いは翌日でもよし。家事より睡眠が絶対優先なのです。