厳しすぎる数値の犠牲者は国民

糖尿病の治療法は、現在、過去1~2カ月程度の血糖値を反映するとされる指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の基準値は長年6パーセントとされてきましたが、7~7.9パーセントくらいに保つ緩い管理をした群のほうがはるかに死亡率が低いという大規模調査の報告が2008年になされました。

ところが世界でいちばん権威のある臨床医学の雑誌にこの論文が掲載されたのに、日本の糖尿病学会はいちゃもんをつけ続け、5年後の2013年になって初めて、低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合に限り8パーセントでのコントロールを許すという新基準を採用しました。

和田秀樹『病気の壁』(興陽館)

今でも、日本では6パーセントにこだわる医者がたくさんいます。

アメリカの内科学会では2018年に具体的な目標値としてほとんどの患者でHbA1c7パーセントを下限とする7~8パーセントとしたほか、余命が10年以内と推定される患者に対しては、HbA1cの目標値も不要とするガイドラインが出されています。

いずれにせよ、諸外国で大規模調査が出されても、偉い先生がたが標準値を変えようとしないために、より患者の死亡率が低い治療が導入されるのに、こんなに時間がかかるのです。

そして厳しすぎる数値の犠牲になって死亡率が高いままだったり、医療費を払わされ続けているのは国民なのです。

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