日本のキャッシュレス化が進まない理由

2025年の大阪万博では、決済アプリやNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)が注目され、それを機に一気に一般化すると考えられている。偽造できない電子チケットの役割を果たすNFTが、万博会場外で割引券などの用途にも使えるようになる。万博会場内ではもちろん、全面キャッシュレス決済の方針を明らかにした。

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日本では現金決済が今でも根強い現実があり、キャッシュレス化への加速度的な対応が求められている。それを受けて、日本のキャッシュレス比率は2021年で32.5%であるが、2025年6月までに40%という政府目標は何とかクリアできるようである(「キャッシュレスの将来像に関する検討会 とりまとめ」『経済産業省』)。

もっとも世界的に見れば日本のキャッシュレス化は遅れており、韓国93.6%、中国83.0%、豪州67.7%などに大きく遅れをとっている。

これにはさまざまな理由はあるが、一つは日本円の信頼度が高く、偽札がほとんど出回ることはないという事情もありそうだ。

また、キャッシュレス決済のシステム導入にコストがかかるうえ、マージンが3~5%かかるため、零細の自営業者には導入が難しいという点もある。特に飲食業などでは、価格を低く抑えるために現金商売という考えの経営者もいるだろう。

「NFTチケット」にする意味はあるのか

そのキャッシュレス化も、万博をきっかけに一気に裾野が広がる可能性は否定しない。ただ、NFT自体が価値を持つかというと、一時はそれを商品化しようという動きはあったが、そのベースになる暗号資産が広がらないこともあって頓挫した。

NFTは追跡可能な、偽物を防ぐ手段でしかない。そう考えると、NFTで電子チケットをつくらなくても、電子チケットであれば十分ではないかという気もする。わざわざ高いコストをかけて偽物を防ぐ必要があるのかどうか、考えたほうがいい。

もっとも1970年の大阪万博では、その入場券はたしかにプラチナチケットだったかもしれないが、現代という時代は、万博会場に行かなければ見られないという時代でもない。

どこまでチケットの価値があるのかという点でも疑問が残る。