「次失言すれば辞職する」と宣言

ことし7月24日の会見で、中日新聞記者が「(2019年12月、自民党県議団を念頭にした)ヤクザ、ゴロツキ発言であるとか、(2020年10月の)菅義偉総理に対する教養レベルが露見したとか、(2021年6月の)知事選の女性蔑視発言であるとか、女性蔑視、学歴差別、地域差別などいろんな分野からの批判が出ている。なぜ、こういう問題が何度も起きてしまうのか」と追及した。

川勝知事は「(選挙応援などの)政務のときとか、さまざまな状況下でそういう発言が出ている。常時公人でいく以外にない。常に公人である。公人としての知事の立場を取ると誓った」と述べた。

筆者撮影
7月24日の会見で、「不適切発言」があれば辞職すると宣言した川勝知事(静岡県庁)

この回答に、記者は「ヤクザ、ゴロツキ発言とかは公人の立場だった。また同じことが起きてしまう気がする」と突っ込んだ。

これに対して、川勝知事は「今度間違うようなことをして、人様に迷惑を掛ければ辞職する」と宣言したのだ。

翌25日の新聞各紙は一斉に「不適切発言をして、今度迷惑をかければ辞める」と川勝知事の“辞職宣言”を大きく取り上げた。

この“辞職宣言”に対して、9月県議会は本会議の最終日(10月13日)、知事給与減額条例案の可決に伴い、全会一致で5項目の「附帯決議」を採択した。

『今後、仮に不適切な発言があった場合には辞職するとの発言に責任を持つこと』――つまり、“辞職宣言”を厳守しろ、という1項目を加えたのである。

「全会一致の決議」への謝罪という苦肉の策

附帯決議に法的拘束力はないから、最終的には、川勝知事の判断に委ねられる。

しかし、“辞職宣言”という大見得を切ったのに対して、県議会全会一致の附帯決議までつけられた。

これでは、「ああ言えばこう言う」川勝知事でさえ、「不適切発言」を認めてしまえば、自らの“辞職宣言”から逃げられないと判断したのだろう。

当然、知事与党「ふじのくに県民クラブ」の県議17人をはじめほとんどの県議は、そんなことを考えて今回の決議に同意したわけではない。「不適切発言」による混乱を踏まえ、知事の反省を求めただけである。

しかし、自民党県議団の強硬派が、「不適切発言」を根拠に辞職を求めてくることは十分に予想できる。

川勝知事は必死で「不適切発言」の訂正を拒否した上で、県議会全会一致の決議に対して、謝罪するという苦肉の策を取ったのだ。