バンカーバスター爆弾を使えないジレンマ

トンネル内部での戦闘を避けたいイスラエル軍は目下、バンカーバスターと呼ばれる爆弾の投入を検討している。航空機からバンカーバスターを投下することで、地下に位置するトンネルを破壊することが可能だ。

バンカーバスターのひとつである「GBU-28」は、2008年から2009年にかけてのガザ戦争で、トンネルを破壊する目的で初めて投入された。地下深くまで貫通することができ、トンネルとその周辺地域に大きな損害を与える。インタレスティング・エンジニアリングによると、イスラエルは2021年、改良版のGBU-72の提供をアメリカに求めている。

バンカーバスターのひとつである「GBU-28」(写真=TSGT MICHAEL AMMONS, USAF/PD US Air Force/Wikimedia Commons

さらには、バンカーバスターを用いない場合でも、地上作戦によってトンネルを破壊することが可能だ。USAトゥデイ紙は、イスラエルがトンネル戦の訓練を受けた専門部隊の派遣を検討していると述べている。こうした部隊はトンネルの位置を特定し、自軍の戦車による護衛を受けながら入口を破壊することで、トンネルの機能を無力化するという。

だが、イスラエル軍は、バンカーバスター爆弾を使えないジレンマに直面している。イスラエルの民間人がトンネルに捕らわれている可能性があるため、不用意にバンカーバスターを投下できないのだ。イスラエル軍が人質解放を急ぎたい隠された理由はここにある。

さらにCNNは、特にガザ市のような人口密集地では、トンネルの破壊作戦はリスクを伴うと指摘する。爆破の衝撃により、ガザの民間人が犠牲になることが考えられるためだ。専門家のリシュモンド=バラク氏は、「トンネルの脅威に対処できる絶対の方法はない」と、対処の難しさを語った。

水攻め、スポンジ爆弾、催涙ガス…

イスラエル軍は、トンネルの破壊には及ばず、機能不全に陥れる作戦に切り替える可能性もある。トンネル網を利用した密輸を食い止めるため、トンネルを水没させる作戦が、過去に功を奏している。ニューヨーク・タイムズ紙は、2007年にハマスが政権を握り、イスラエルが封鎖を強化したのを機に、密輸目的のトンネルが急増したと報じている。一部のトンネルはいまだに稼働しているが、エジプト当局は当時、海水でトンネルを浸水させることで密輸の阻止を試みた。

イスラエル軍はまた、トンネルを迅速に封鎖するための「スポンジ爆弾」を開発している。アルジャジーラによるとスポンジ爆弾は、2種類の化学物質を反応させることで、広がりながらコンクリートのように固まってゆく泡状の物体を放出し、効率的にトンネルを封鎖する。もっとも、実戦配備の準備が整っているかは不明だ。また、イスラエル軍の目的は、トンネルを一時的に封鎖することではなく、完全に破壊することにある。