「高学歴貧困家庭」で育った40代女性

――本書では、セックスワークをしていた高学歴難民女性の事例として、ギャルから研究者になった40代女性のエピソードも紹介されていました。

父親は大学教授、母親は元研究者という高学歴貧困家庭に生まれた女性ですね。彼女とはテレビにも出演している有名な研究者のイベントで知り合いました。見た目が派手で、会場のなかでもパッと目を惹く存在だったことを覚えています。

父親は大学教授でしたが、30代の後半に職を得たことと、そして勤務先があまり規模が大きくない大学だったこともあり経済的には恵まれていなかったそうです。

彼女が高校生の頃はコギャルブーム全盛期で、彼女自身も渋谷のセンター街を歩くギャルになり、高校卒業後は憧れのショップ店員として働きました。そんな彼女も20歳を過ぎたときに、自分が流行の中心から遠ざかってきたのを感じ始め「英語を話せるようになりたい」と思って英会話教室の体験入学に飛び込んだそうです。しかし、英会話教室にいた生徒はほとんどが大学生で、生まれて初めて学歴コンプレックスを味わったといいます。

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彼女はもともと勉強ができたようで、仕事をしながら予備校に通い、有名大学の英文学科に入学します。その後、大学時代に知り合った男性と30歳のときに結婚し、夫に生活費を負担してもらいながら、博士課程まで進みます。この頃から初心者向けの英会話教室を開き、ブログやSNSの発信を機に応援してくれる人も増えてきたそうです。

生活基盤を立て直し、事業でも成功

――スタートこそ遅かったものの、ここまでは順調に見えます。

ただ、研究者である夫が彼女の成功を妬み、彼女の資金や場所を提供してくれることになっていた人に直接抗議するなどの嫌がらせをした結果、彼女についていたスポンサーからの支援がすべて絶たれてしまうんです。

夫とは離婚し、なんとか借りた自宅の一部を改装して教室を再開しましたが、月10万円ほどの収入ではやっていくのは厳しい。かといって、大学ですでに講義を持っていたこともあり、スーパーやファストフード店で働くわけにはいかないという理由で、セックスワークの世界に足を踏み入れたそうです。

ちなみに、彼女はセックスワークを5年ほど続けて生活の基盤を立て直した後、教室を大きくし、本も出版しています。