博士号などの学位を取得しても、定職につけず、生きづらさを抱えている人たちがいる。そうした「高学歴難民」には、特有の困難がある。犯罪加害者の家族を支援するNPO法人の代表で、『高学歴難民』(講談社現代新書)を書いた阿部恭子さんに聞いた――。(第1回/全3回)
ひどく疲れて落ち込んでいる女性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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「東大を卒業したけれどフラフラ」は対象外

――本書における「高学歴難民」の定義を教えてください。

私は高学歴難民を「大卒以上の学歴があるが定職に就くことができない人」と定義しました。「高学歴」という意味ですが、本書では「博士の学位を持っている、あるいは修士の学位を取得して後期博士課程まで進学したが定職に就けないなど、なんらかの困難に見舞われている人」という人々を対象としています。ロースクールは大学卒業後に入る機関ですが、卒業後に与えられる称号は「法務博士」なので、本書の高学歴難民の実態は博士難民ですね。

東大を卒業した後に定職に就かずにフラフラしている人や意外に就職ができない人たちもいるかもしれませんが、今回、そういった事例は「高学歴難民」としては扱ってしません。取材した人は卒業した学校名と学位を取得していることは必ず確認しています。

――本書に登場する取材対象者とは、どのように知り合ったのでしょうか。

過去に知り合った方々が多いですね。具体的には、学生時代の知人や、私が代表を務めるNPOの活動のなかで知り合った犯罪加害者家族、アルバイトをしていた塾や大学で一緒だった同僚などです。私にとって高学歴難民は特別ではなく、日常に当たり前にいる存在でした。