なぜ高学歴女性はセックスワークを選ぶのか

――本書には、高学歴難民の女性がセックスワーカーとして働いている事例がいくつか登場します。彼女たちはなぜ、生活費を稼ぐ方法としてセックスワークを選ぶのでしょうか。

自分たちのことを知っている人に見つからずに、高い報酬を得たいからという話をよく聞きます。セックスワークは密室での労働ですから、店を選びさえすれば顔がバレにくいですし、コンビニ店員や塾講師よりもずっと時給がいい。

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本書で紹介している女性のひとりは、「『男に金を与えてやっている』という優越感を売ることだけはしたくない」と話しています。彼女としては、笑顔ですらタダで売ることなんて許せないわけです。キャバクラなどの接客は面倒。それよりも、男性を射精させるという仕事の目的がはっきりしているセックスワークのほうが取り組みやすいということでした。

コールガール 私は大学教師(プロフェッサー)、そして売春婦』の著者も「教壇に立って何人もの学生を見ている私が、いまさらファストフード店では働けません」と告白していますが、客から暴力を振るわれたり、かなり危険な目にも遭っていて、私が彼女と同じ立場だったら、間違いなくファストフード店で働くことを選びます。

「ノーベル賞を取ったらどうしよう」

――セックスワークをして生計を立てている高学歴難民の女性で、印象に残っている事例を教えてください。

理系の博士号を取得し、セックスワークをしながら家賃6万円のアパートをシェアして暮らしている30代の女性がいます。彼女は幼い頃から「博士」というあだ名がつくほど勉強ができる子でしたが、地方の貧しい農家の家に生まれたために経済的に大学進学が難しかったのです。お金持ちの同級生に負けたくないという思いと、自分の魅力を確かめるために、中学2年生の頃から売春行為を繰り返してきたようです。

取材のなかで「セックスワークをしていることがバレたらどうしようとは思わないんですか?」と聞いたことがありました。すると彼女は「私は絶対にバレないようにしているから大丈夫。でも、ノーベル賞を取ったらどうしよう」と一瞬、考え込みました。高学歴難民からしか聞けない印象的なひと言でした。