薬物依存症にならないため、まず治療に専念させる
病院に入り治療をし、施設に入って薬をやめる。出てきたときに生活環境を整えることが先決だ。交友関係を変え、薬物の危険がある繁華街に行かないようにするのは当たり前のこと。
「しかし、一人暮らしだった場合、手元にあるスマホを見たら、また薬物をやりたくなるのです。再犯再乱用につながりやすいリスクがスマホによって増えたと言っていいと思います」(瀬戸さん)
瀬戸さんが扱ったケースでは、まじめな女子大生が、友人からすすめられて旅先で大麻を体験。家に戻ってから「野菜、手押し」と検索してネットで購入していった。友人宅でマトリの捜索にも遭い、事情聴取も受け、いったんは依存症から脱却できたかにも見えた。ところが次に手を出したのは、市販薬だった。
「いったん薬物に依存してしまうと、繰り返すのには訳があります。脳の報酬系(欲求が満たされたときや、満たされるとわかったときに活性化し、快感、幸福感などを引き起こす脳内のシステムのこと)がダメージを受け、物質に対して依存してしまうのです。
渇望があって欲しがる依存と、渇望はなくなったけれど、誰かや何かに頼るところがない不安。薬物とは切れることができても、行動依存は残っています。心のよりどころがないと不安に陥り、ネットを見たら『金パブ50錠飲んだら、悲しいことから救われた』などという記述があるので、『規制されてない市販品なら悪いことではない』と思い込んでしまうのです」(瀬戸さん)
大学主催の啓発活動だけでは薬物の蔓延を防げない
依存症は、プログラムを組んでリハビリしていかなければ治せない。「グループミーティングに行って仲間と話し合い、いろんな認知行動療法を繰り返しやっていかなければ治らない」と瀬戸さんは言う。
薬物はしない、させない。不幸にも手を出してしまったら早期に発見し、早期に治療を施す。そして薬物教育を徹底して伝授し、社会復帰させて支援する。その仕組みの構築が望まれる。
「結局、社会の問題なので、地域で協議会を作って行政的に進めてもらい、関係者に全部入ってもらって問題を共有しなければ薬物乱用防止にはなりません。地域の警察やサポートセンター、または大学生や高校生の同世代の子どもたちが、子どもたちを教えるようなサポーターづくりをしなけれなりません。
大学側は、薬物乱用防止のための説明会などをしますが、薬物乱用や薬物事犯がどんなに大変なことかという重要性を知りません。薬物をなめていると言ってもいいと思います。講義するだけではなく、学生や中高生にグループミーティングさせて、なぜいけないのかということを考えさせなければいけないと考えます」(瀬戸さん)