曹操や信長がリーダーとして評価された理由

山口周『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』(KADOKAWA)

そのような曹操に対して、後漢の人物鑑定家の許子將(許劭)は「君清平之奸賊亂世之英雄」(君は平和な世の中では大泥棒だが、乱世となれば英雄だ)と評しています。平和な世の中ではリーダーとして活躍できないだろうが、乱世になればリーダーシップを発揮できる、と言っているわけです。

同じことは我が国の織田信長にも言えるかも知れません。曹操も信長も、どちらかというと冷徹な合理主義者というイメージが強いですが、こういったリーダーシップスタイルが結果に結びついたのは、道徳やら人間性やらと言っていられない乱世という文脈ゆえのものだったと考えることもできます。

マキャベリズムについてもまた同様に考えることが必要だと思います。500年前のフィレンツェにおいて提案された「リーダーの人材要件」が、これほどまでに時空を超えた広がりを持って共有されているということは、マキャベリの主張に何がしかの真実と思える内容が含まれているということでしょう。

リーダーには「孤独で暗黒の責任」が伴う

リーダーの立場にある人であれば、状況次第では歓迎されない決断、部下を傷つける決断を迫られる時があります。それでもリーダーは、それがビジネスであれ、他の組織であれ、家族であれ、自分が長期的な繁栄と幸福に責任を持つのであれば、断じて決断し、あるいは行動しなければならない時がある、ということをマキャベリズムは教えてくれます。

リーダーの立場に立つ、というのはしばしば孤独で暗黒の責任を伴うことになりますが、一方でそれが権力の本質なのだということなのかも知れません。

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