会社の業績を立て直すには、どうすればいいのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「経営の神様と呼ばれた京セラ創業者の稲盛和夫さんは、JALの再建で効率的なコストカットを断行した。稲盛さんは『お客さま第一』を徹底しながら、コストカットを進める達人だった」という――。(第2回)

※本稿は、小宮一慶『だから、会社が倒産する』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

飛行機の尾翼にペイントされたJALのロゴ
写真=iStock.com/Teka77
※写真はイメージです

「コストカット=リストラ」には要注意

コストカットという言葉から、人員の整理を連想する方もいるでしょう。もちろん、いざというときにはリストラも考えなければいけませんが、認識しておくべきなのは、もしも業績が回復したとしても、一度雇用契約を切った従業員に戻ってきてもらうのは現実的ではないということです。とくに日本の場合、「出戻り」はまれであると考えたほうがいいでしょう(ただし、良い会社では出戻りがあります)。

人員整理の判断が遅くなって会社が潰れては元も子もありませんが、それでも従業員の人生にも大きな影響を与えるため、きわめて慎重に考えるべき問題です。そんな状況を招かないためにも、普段から「お客さま第一」を徹底することで稼ぎ、そして、つねに手元にお金が十分ある状況をつくっておくことです。

生産性の向上とは何かと具体的にいえば、働く人一人当たりの付加価値額を増やすことです。インフレを契機に賃上げが少し進んでいますが、そのなかでも5~6%も簡単に上げている企業があります。その会社の生産性が高いからです。そして、良い人材はそうした企業へと向かいます。

ドラッカーはかつて、21世紀は「知の時代」だと語りました。知の時代を生き残るためには優秀な人材を確保することが第一です。そのためには高い給料を払える構造にしなくてはいけません。そんな企業が好循環で業績を伸ばす時代なのです。