「羽根が邪魔だ」からヒット商品が誕生

その後のかれのヒット商品は、羽根のない扇風機だ。扇風機の羽根が邪魔だとは、普通の人は思わない。風を起こすには、プロペラがいるのが当たり前だと思うから、誰も羽根のない扇風機なんて思いつかない。

写真=iStock.com/natthapenpis
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でも、あるとき、かれはその羽根の存在にフラストレーションを感じてしまった。プロペラ以外の方法で風を起こすことはできないのか?

古我知史『いずれ起業したいな、と思っているきみに 17歳からのスタートアップの授業 アントレプレナー列伝』(BOW BOOKS)

そうして生まれた、特徴的なフォルムの羽根のない扇風機は、静電気を利用して風を起こす。実は、それ自体は、昔から知られている技術で、別にかれが発明したわけではない。だから、いまでは、多くのメーカーが似たような形の羽根のない扇風機をつくっている。

サイクロン方式も、そうだ。昔から考えられていた技術で、かれが発明した技術ではない。でも、そういうもともとある技術を活かして、それを掃除機にしたり、扇風機に変えていく。徹底的にひねって工夫してこねくり回しながら磨き上げていく。まさに、パラノイアだ。そして、それが、ダイソンという個性的なベンチャーを生み、いまも世界の生活に驚きを提案している。

ジェームズ・ダイソン曰く、「ダイソンには、スタートアップの精神、すなわち実験し、学び、冒険する自由を持ち続けてほしいと考えている。僕らには階層的マネジメントは不要だ。それは無難な方法かもしれないが、僕らは週単位で変化、進化する協働的企業である」と。

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