「察する文化」が言葉の壁になっている

背景にあるのは、日本人独自の空気を読む文化のようだ。はっきり意思表示をしなくても、いわゆる「あ・うんの呼吸」で、「ああ、この人はおそらくこうなんだな」と相手が察してくれるのだ。

実はわかっていなかったとしたら、「うーん」とモジモジしている様子を見れば、「ああ、わかっていないな」と気づいてもらえる。それなりの対応をしてもらえる。日本人は、こうした文化に慣れているのである。しかし、海外ではそれはないのだ。

「あと、最近気になっているのは、自己中心的な若者が日本人に増えてきていることです。何の前触れもなくいきなり、辞めます、と連絡が来たりする。ちょっと相談してくれればいいのに、と思うんですが、それもない。中には、連絡を絶って来なくなってしまう人もいます」

このコメントが出るのは、かつてはこんな日本人はまずいなかったからだという。

そして裏を返せば、それは日本人が評価されていた点だったからだ。

「まじめですよね。そして、誠実。本当によく働く。何かあると気遣える。これは私だけではなく、他のブランチマネージャーや他の店の人たちにも聞いて、出てきた日本人に対するコメントでした」

筆者撮影
ニューサウスウェールズ州立美術館

アニメは最強の「共通の話題」

日本人に英語が苦手な人がたくさんいることは、現地の人たちもよく知っている。また、経済が停滞していたり、賃金が上がっていなかったり、為替が弱くなっていることも明らかになってきている。ただ、それで日本や日本人が低く見られているのかというと、そんなことはないようである。語学学校「MIT」の校長YOSHIさんは言う。

「あまりイメージは変わっていないですね。今も、クリーンでお金持ちの国だと思われています。稼げる国ではないけれど、経済大国というイメージは強い。あとは、食べ物がおいしくて、街が美しくて、統率されている」

しっかり教育が行われていて、道徳的であるという印象も強いという。

「悪いことをする人は少ない、というイメージがありますね。最近では残念なことにちょっと変わってきていますけど。そもそも、安全、安心な国と思われています。あとは漫画やアニメなど、サブカルチャーも人気。アジアでは日本のアニメ映画が人気ですし、中南米では日本の古いアニメが放送されていたりしているので、世界の人たちと共通のテーマになります」