参加の是非が人事評価に影響があればそれは「労働」
つまり、結局のところは、労働者側がそのような行為を強制されているかどうかが重要なのです。明確に業務命令として、ボランティア活動への参加が強制されている場合もあるでしょうが、表向きには自由参加のような体裁をとりながら、従業員の立場としては事実上ボランティア活動へ参加せざるを得ないような状況になっているケースもあるでしょう。
先ほど例に出した始業前の会社周辺の清掃についても同じです。始業前の清掃がその会社の文化になってしまっており、その会社に入社した人間は、その清掃活動を行うのが当たり前との文化が根付き、やりたくない人も会社の業務の一環として、やらざるを得ない雰囲気がある。そして、清掃活動をしないと、会社から「何でやらないんだ」と指摘を受ける。そうしたものは「労働時間」と捉えるべきで、賃金の支払いが必要です。
パレード参加は「業務の一環」と評価できる
それでは今回の大阪府や大阪市の状況はどう考えるべきでしょうか。
MBS NEWSによると、ボランティアを募るメールには「各所属には、本務職員数の22%のボランティア参加を求められています」「課長級、課長代理級の積極的な参加をお願いします」などと書かれており、ノルマともとれる各部局ごとの必要人数が記されていました。
通常の業務命令と同じような経路で、上司から部下に対してボランティアに参加するよう打診があり、それを部下の立場として見たときには、やはり業務の一環として上司から流れてきた指示と受け止める余地が十分にあるでしょう。
仮にそこにボランティアであることや自由参加であることが書かれていたとしても、そのコミュニティーの文化として、ボランティア活動へ参加しないことが、事実上何らかの人事評価につながったり、社内での立場の悪さにつながったりする恐れがあります。そのような状況を考えると、この1日のボランティア活動は自由意思に基づく完全なボランティア活動ではなく、大阪府や大阪市の指揮命令下に置かれた、客観的には労働の側面を有していると評価される可能性があるでしょう。
仮に裁判で未払い賃金の支払いを命じられたとなると、ボランティアに参加した2400人以上の職員について、7時間分の未払い残業代の支払い義務が発生するだけでなく、年利6%の遅延損害金まで発生することとなりますから、府や市にとっては莫大な金額になるでしょう。