「新築」「23区内」は高ポイントに見えるけれど…

……と、ここまで読んでくださった方は、「何が問題なの?」「エリートサラリーマンはいいよね」と思われるかもしれません。しかし、今回の学びは、ここからが本番なのです。

まず、辻野さんの選択した物件に大きな落とし穴がありました。「新築」「23区内」という点です。どれも不動産投資としては高ポイントに見えそうですが、実は問題大ありです。

「新築」についてはこの連載で何度もお伝えしてきたとおり、「新築プレミアム」として、新築物件を販売するための宣伝費や人件費などが上乗せされており、実際の市場価格から2割ほど売値にプラスされています。ですから、辻野さんの購入した本来の物件価値は、2300万~2600万円ほどになります。

続く落とし穴②は、「23区内」という立地について。たしかに、都心5区と言われる千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区であれば資産価値は高いのですが、辻野さんの購入した物件はギリギリ23区内といえる立地。しかも、駅からの距離は13分。不動産投資においては、「駅徒歩10分圏内」か否かで、その価値が天と地ほど変わります。大げさでなく、「徒歩10分」か「徒歩11分」かというこの1分の差で、坪単価が高い首都圏の物件価格には明らかに影響があるのです。

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不動産会社の“鉄板営業トーク”

辻野さんのローン返済額は月10万を超えていましたが、家賃9万5000円で貸し出していました。この時点ですでに毎月5000円の赤字になっていますが、マンションの立地と市場相場を考えた場合、新築であっても10万円では借り手がつかず、結局、9万5000円の家賃で貸し出すしかなかったのです。また、借り手がつきにくいことからもわかるように、こうした新築で購入した立地の微妙なマンションは売却も難しくなります。

いくら破格の高待遇で不動産の購入ができたとはいえ、なぜ辻野さんは毎月赤字になるような不動産投資をしたのでしょう。この時、お客を落とす不動産会社の“鉄板営業トーク”がありました。

1つ目は、「節税効果」。不動産投資をできる方は高収入でエリートの方が多いので、税金が高い場合が多い。不動産所得は給与所得等との総合課税なので、不動産所得でマイナスが出れば、その分、税金が安くなる可能性があるのです。辻野さんの場合、不動産所得がマイナスなので、給与所得から不動産所得を差し引くことができるため、そのぶん課税される金額が小さくなります。