※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
年収 800万円
貯金 1000万円
先行き不透明な会社内で流行っていた「不動産投資」
給料の天井が見えてしまった時。仕事人生に疲れてしまった時。ふと、手を出してしまう人が多いのが「不動産投資」です。エリート・知識人も陥落してしまう不動産会社の営業トークには、ある秘密がありました。
年収800万円を稼ぐ大手メーカー勤務の辻野栄太郎さん(仮名/34歳)。勤務先は誰もが知る老舗メーカーですが、先輩たちの給料を聞くにつけ、先行きは明るいものではないと感じていました。そのわりに仕事は激務で、お金をつかう暇もなく、貯金は1000万円になっていました。仕事にもいまいち情熱が持てず、老舗メーカーゆえか、最近はトレンドを読み間違えがちで業績は伸び悩み、給料も頭打ち。果たして定年まで会社は無事なのだろうか――。そんなぼんやりした不安を抱えていたのは周りの同僚も同じで、社員たちの間で流行っていたのが、「不動産投資」でした。
不動産投資を始めるには、事実上年収のラインがあります。最低でも500万円程度以上の年収がなければ、不動産投資のための融資を受けられないのです。ですから、不動産会社の営業部員は、大企業や公務員などに的を絞って営業をかけることが多いです。辻野さんの周りで不動産投資を始める人が多かったのも、やはり不動産会社からの営業を受けたことがきっかけとなった人が大半でした。
頭金は最低限、好条件でローンを組めた
不安を解消するための“副業”を考えていた辻野さんは、同僚から不動産会社を紹介してもらい、大手企業勤務という特権で、1%台という低金利でローンを組めることを知り、35年ローンで23区内に新築マンションを3000万円台前半程度の金額で購入します。
居住用の住宅ローンの金利は現在、変動金利で0.5%ほどになりますが、不動産投資の場合、住宅ローンよりも金利は割高になります。また、金利条件は年収や勤務先、金融機関などによって大きく異なり、場合によっては3%、4%台になる場合もあります。そんな中、辻野さんの1%台という金利は不動産投資ではかなりの好条件。しかも、低金利で不動産投資を始められる“特権階級”の場合、頭金のハードルも低く設定されていることが多く、辻野さんの場合も頭金は10万円のみ。残りの3000万円程度を35年という長期ローンで組むことができました。このような破格の待遇は、老舗大手企業の信用力の賜物といえるでしょう。
辻野さんは将来に備え、早速購入したマンションを貸し出し、賃貸収入で安定した暮らしを手に入れようとします。