「月5000円で資産と保険を手に入れられるんです!」

「思ったような家賃収入が入らなくてもその分節税になります!」という営業トークは、所得税を多く払っているエリート層には響くようで、「なるほど!」となってしまう。しかも、不動産投資1年目は物件購入の手数料やローンの諸経費などで経費計上が多いため、マイナスが大きく出ることが大半。節税効果も実感しやすいため、ますます営業の術中にはまってしまうんです。

とはいえ、多くの方が2年目からは給与所得から差し引けるマイナスの不動産所得の金額は小さいので、節税効果は薄くなっていきます。そこで、ダメ押しの営業トークが、「毎月5000円でこの家があなたの資産になる」。さらに畳み掛けるように、「もし何かあったときには、この家をまるまるタダで、奥さんのものとして遺してあげられます。月5000円で資産と保険を手に入れられるんです!」。ここで出てくる保険とは、団体信用生命保険のことで、不動産投資でも団信に加入できるので、家族のいる方は、ますます「いいね!」となってしまう。結婚を考えていた辻野さんの心にも響き、契約となったのでした。

積み上げられた「TAX」と書かれた木製ブロックの横で、「TAX」と書かれたカードがハサミで裁断されている
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新築マンションを買っても儲けはほとんど出ない

本来、将来を安定させるための“財源”として始めたはずの不動産投資にもかかわらず、資産価値として疑問符がつくような物件を購入する方がいるのは、このような不動産会社の巧みな営業トークがその裏にあったのです。私も間近で見たことがありますが、高学歴高収入のエリートを相手に、熱く、ハートフルなトークで彼らを納得させてしまう営業のスキルは、目を見張るものがあります。

ただ、不動産投資は長きにわたる投資です。不動産会社の方は最初5年、10年のシミュレーションは見せてくれますが、時間が経つにつれて新築の価値は落ちていきます。そうなると、家賃をさらに下げなければいけないかもしれないし、クリーニングやメンテンスといった費用も増えていく。辻野さんは新築プレミアムの問題もあって、売却益を出すことも難しいので、そういったことをすべて考慮すると、新築マンションを買っても儲けはほとんど出ないと考えていいと思います。