年収が高いのに貯金ができない人にはどんな事情があるのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「相談に来た年収2000万円の男性は、子供たちの養育費を毎月約70万円支払っている状況だった。だが、家計が厳しい背景にはそれ以外の要因もあった」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

タクシーの後部座席で、スマホを見てほほ笑んでいる男性
写真=iStock.com/seven
※写真はイメージです

養育費の支払いだけで月約70万円

大手マスコミで働く友人・五十嵐稔さん(43歳/仮名)の結婚式に2回、出席したことのある私。新卒で大手テレビ局に入社し、華やかなキャリアを歩んできた五十嵐さんですが、御本人は控えめな聞き上手といった紳士で、チャラチャラした雰囲気はありません。そんな物腰ゆえか、既婚でも大変、モテる。そしてついに浮気が本気になってしまったようで、この度、2度目の離婚。またシングルに戻った五十嵐さんから、「仕事として相談にのってほしい」と連絡があったのです。

彼は、過去2回の結婚でお子さんを2人ずつ授かっていました。子育てはすべて元妻たちが担っていますが、五十嵐さんには、4人分の養育費が重くのしかかっていたのです。

五十嵐さんの年収は2000万円で、2人の元妻は共に専業主婦だったため、収入はなし。裁判所が公開している養育費の算定表を見ていただくとわかるのですが、夫婦間の収入差が大きければ大きいほど、養育費の負担額は重くなります。4人の子ども全員が14歳以下の五十嵐さんの場合、子ども2人分で月34~36万円。さらにもう2人分を合わせると、養育費の支払いは月約70万円になっていました。

ちなみに、子どもの年齢によって養育費は変動し、第1子、第2子がともに15歳以上になると、月38~40万円になります。また、今後、子どもが私立校への進学や海外留学といった、高額な教育費が見込まれる進路を望んだ場合、相談に応じる必要もあるでしょう。

養育費未払いを防ぐには「公正証書」の作成がおすすめ

少し話はそれますが、母子家庭の約7割が養育費を支払ってもらえていない現状の中(※)、五十嵐さんの対応はまっとうなものでしょう。養育費未払いといったリスクを回避するには、公正証書(強制執行認諾文言付)の作成がおすすめです。養育費含め、公正証書に記載した約束に反した場合、給料や預貯金といった財産の差し押さえができるのです。

ただし、基本的に公正証書を作成する時や受け取る時には、夫婦そろって公正役場に出向く必要があります。夫婦で行きたくないという場合には、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に代理人を依頼できるか相談してみましょう。

また、意外と知られていないのが、「婚姻費用」。婚姻費用とは、結婚生活を送るとき、日常の生活費、医療費、交際費など必ずかかる生活費のこと。夫婦には婚姻費用を分かち合う義務があり、結婚している限り、その義務は続きます。夫婦関係が悪化し、別居などをしている場合でも義務は発生します。この婚姻費用の金額は、夫婦の年収、子供の人数、年齢などにより家庭裁判所が作成している算定表にもとづき決定されます。婚姻費用の中には、子どもの養育費も含まれます。私のお客さまで別居をしていた方も、離婚届を出すまでの間の生活費を弁護士に頼んでまとめてもらえた方もいますので、これも覚えておくといいでしょう。

※厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します」2022年12月26日