「具材ごろごろ」は見栄えはよいがリスク大

竹谷さんは糸引きの原因として、①栗やりんご、ブルーベリーなど具材の選択に問題があり配合量も多く、焼きが甘くなったのではないか、②マフィンを焼き上げた後の保存方法に問題があった、③砂糖の配合量が少なかったことで、砂糖の効果である保存性が大きく下がり、①②の条件が助長されてマフィン内での細菌の増殖につながった……という見方を示しました。

①の具材の問題は、竹谷さんがとくに注目した部分です。製品の表示ラベルを信用する限り、生のフルーツなどの具材を使った可能性があります。大きなフルーツをごろごろ入れると、見栄え、食べ応えはよくなりますが、実は高度な技術が必要。そもそも、小麦粉や卵などからできる生地の部分とフルーツでは、オーブンの中での温度の上がり具合がまったく異なるので、両者をしっかり加熱し、しかも生地部分は焼きすぎずしっとりと仕上げるのはとんでもなく難しい、というのです。

竹谷さんは、問題の店の製品の写真を見てこう話します。「どうも見た感じ、焼きが甘いようです。生き残った細菌が冷ました後に一気に増殖したのではないか」。

写真=iStock.com/Strelciuc Dumitru
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砂糖半減で、保存効果が失われた

②については、店が自らInstagramで、「5日間ずっと製造しないと間に合わない」「保管場所は18℃以下を保っていましたが、外気温が高かったため何個か傷んでしまった可能性がございます」と説明していました。

一般には、マフィンは焼いて粗熱が取れたらパッケージに脱酸素剤と共に入れて密封し、翌日に販売するのであればそのまま常温保存し翌日売り切ります。製造して2日以上経った後に販売しなければならない場合は、包装密封後に冷凍し、販売前日に解凍します。対応がまったく異なることがおわかりでしょう。

そして、③の砂糖について。砂糖は、単に食品を甘くするだけではなく、砂糖が水分を多く抱え込んでくれるため、細菌が利用できる水分が少なくなり細菌増殖を抑えるのに役立ちます。さらに砂糖は、でんぷんの老化防止、油の酸化防止などの効果も持ちます。問題のマフィンでは、こうした効果を持つ砂糖が半分以上減らされていたため、細菌増殖に好条件となった、と考えられます。