欲求系物質と快楽系物質が相補的に働く
長いこと、ドーパミンは快楽物質であると考えられてきました。しかし、最近の研究では、ドーパミンの効果は人に快楽を感じさせることよりも、何かを求めたり、欲したり、探させたりすることであることがわかってきています。ドーパミンが駆動するのは覚醒、意欲、目標志向行動などで、その対象には食べ物、異性などの物質的欲求だけでなく、抽象的な概念、つまり素晴らしいアイデアや新しい知見といったものも含まれます。
ちなみに最近の研究では快楽に関与しているのはドーパミンよりオピオイドであることがわかっています。ケント・バーリッジの研究によれば、この二つの系=欲求系ドーパミンと快楽系オピオイドは相補的に働くらしい。つまり人をコントロールするエンジンとブレーキのような役割ということです。欲求系=ドーパミンにより特定の行動に駆り立てられ、快楽系=オピオイドが満足を感じさせて追求行動を停止する。
SNSにハマるのは「予測不可能だから」
そしてここが重要な点なのですが、一般に欲求系は快楽系より強く働くため、多くの人は常に何らかの欲求を感じて追求行動に駆り立てられているのです。
ドーパミンシステムは、予測できない出来事に直面したときに刺激されます。予測できない出来事、つまりスキナーボックスの実験条件=④の場合、ということです。
ツイッターやフェイスブック、メールは予測できません。これらのメディアは変動比率スケジュールで動いているため、人の行動を強化する(繰り返しそれを行わせる)効果が非常に強いのです。
なぜソーシャルメディアにハマるのか? それは「予測不可能だから」というのが、近年の学習理論の知見がもたらしてくれる答えだということになります。